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今年の思潮を総括する座談会での宮台発言です

朝日カルチャーセンターで十年教えてきましたが、数年前から政治哲学の原理的思考に対するニーズが上昇しました。

 従来は大学でゼミの希望者を篩い落とすべく政治哲学の難しい話をすると人が来なくなったのが、逆に増えるようになりました。理由は、現実が流動的になり、比較的動きにくいも––古典だったり原理的なものだったり––に対する要求が高まったことです。

 「戦後日本は個人主義化しすぎた」という安倍晋三的ないし自称「保守論壇」的な“頭の悪い議論”が衰退し、三島由紀夫が右翼を標榜しつつ徴兵制や愛国教育や核武装に反対した理由を一水会元代表鈴木邦男氏が朝日新聞で論じる時代になりました。

 僕の師匠で先日他界した極右の小室直樹先生が、日本はもう駄目だと慨嘆する僕に、「いや、宮台君、社会が悪くなると人が輝くんだ、心配はいらない」と答えたのが15年前。まさしく小室先生の仰言った通りなのかもしれないと感じるこの頃です。

カルチャーセンターでは今、最先端の思想でなく、古典を教えてくれという要求が専らです。僕の私塾(思想塾[朝日カルチャーセンターに吸収]と宮台特別ゼミ]もそう。受講生らに尋ねると「巷の理解が間違ってるようだから」と言う。

若い人たちが古典を教えてくださいと言ってくる。今何が起こっているのかを知りたければ古典的書物を繙かないと分からないという予感です。

菅直人政権がなぜ駄目か。共感能力に疑念があるからです。人々の苦しみを「悲しみ」、その原因に対して「怒り」、原因を取り除く「希望を示す」という回路が回ってない。