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震災と日本人 倫理学者 竹内整一  連載(5) 文明が進むほど天然の暴威は激烈の度を増す

「西欧科学を輸入した現代日本人は西洋と日本とで自然の環境に著しい相違のあることを無視し、従って伝来の相地の学を蔑視して建てるべからざる所に人工を建設した。そうして克服し得たつもりの自然の厳父のふるった鞭のひと打ちで、その建設物が実にいくじもなく壊滅する、それを眼前に見ながら自己の錯誤を悟らないでいる、といったような場合が近ごろ頻繁に起こるように思われる」(寺田寅彦「日本人の自然観」)。

物理学者・寺田の提言は、「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増すという事実」(寺田寅彦「天災と国防」)を直視したところでの、あるべき「文明」「人工」の建設に向けられている。単に「おのずから」を征服しようとするのでなく、それをそれとしてきちんと受けとめたところでの「みずから」の営みの主張である。