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量的緩和は「ニセ妙薬」に近い 市場の誤解を利用するFRB|金融市場異論百出|ダイヤモンド・オンライン

 中央銀行が市中金融機関の超過準備を大規模に増加させると、さらに金融緩和が進んで、マネーサプライが増加し、その国の通貨は下落する、という見方がある。しかし、そういった貨幣乗数モデルは今は機能しない。中央銀行がいくら大量にマネタリーベースを増やしても、その資金は市中に流れず、単に中央銀行当座預金に退蔵されるだけに終わってしまう。


 最大の理由は、銀行経営における資本の制約にある。貨幣乗数モデルは、準備預金を追加的に手に入れた銀行は、貸し出しや証券投資を自動的に増加させることを前提にしている。しかし、現代の厳しい自己資本比率規制、レバレッジ規制の下ではそうはならない。

 実際、FRBは2010年11月から翌年6月にかけて、いわゆるQE2によって金融機関の準備預金を6000億ドル増加させたが、その大半は実体経済に流れていない。米国における外国銀行がドル短期金融市場でそれをかき集め、FRB当座預金に預けることで鞘を抜いているだけだ。米国の短期金融市場関係者の間ではそうした見方は今や常識となっている。外為トレーダーやエコノミストが「マネタリーベースを増やせば金融緩和になる」と言うのを耳にすると、彼らは「わかってないなあ」とあきれた顔をする。

 とはいえ、FRBがQE2を導入したら、ダウやコモディティは上昇、ドルは下落という反応が市場で一時見られた。それらは多分に誤解から生じた心理的な「ニセ妙薬効果」だったといえる。

 量的緩和策が額面通りには機能しないことを、実はバーナンキFRB議長はよく認識している。彼は「金融政策は万能薬ではない」と度々述べ、先日の議会証言では、市場への資金供給を増やしても「単に準備預金が電子的に増加するだけだ」と述べた。その点では彼はニセ薬売りとは違うのだが、市場の誤解をあえて利用してきた面はある。