https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

『もういちど読む山川倫理』
P223

 文芸は,ものに感じる心を素直に表現するものであり,心情の発露をすなおに味わえばよく,それを道徳的に判断するべきではない。『源氏物語』の主人公光源氏と多くの女性との恋愛は,そこに表現された恋の美しさを味わえばよいものであり,光源氏もののあはれを知る「心ある人」なのである。

「道ならぬ恋は人のすることではなく,もっとも戒しむべきことである……だが,心ではあくまでしてはならないと思いながら,それをおさえることができないほどの強い情熱に動かされるのが好色の道であり,そこでいけないことだと知りながら,道ならぬ恋にのめりこむことも起こるのである……人は誰でも聖人ではないのだから,悪いこともするだろうし,それを心に思うこともあるだろう。善いことばかりを考え,行うのが人ではない。歌はそのような自然な人の心に由来するのだから,その中に道ならぬ恋を詠んだ歌がまじるのも当然である。」

『排蘆小船・石上私淑言』
P53