民主党が歴史的大勝で政権交代を果たした平成21年8月30日の衆院選の直後、小沢一郎代表代行(当時)はひそかに民主党の崩壊を“予言”していた。
投開票の翌朝、小沢氏は側近議員の携帯電話を鳴らし、「2週間は地元であいさつ回りをするようみんなに言ってくれ」と指令を出した。そして、側近議員に「圧勝してよかったですね」と持ち上げられると、うなるように語った。
「いや。これは勝ちすぎだ。あとになれば分かるだろう…」
「党内には『小沢嫌い』がいっぱいいる。どうせみんな離れていく」と語っていたことも、後に自民党の森喜朗元首相に暴露されている。
「民主党は衆院選で308議席も取ったんだぞ。勝ちすぎたんだよ。小沢が党を出ていったところでビクともしない」
反小沢系議員の1人は当時、「小沢外し」の貫徹を宣言した。308議席は、反小沢系には「盤石の数字」と映った。小沢氏にとっては、せっかく築いた権力構造のタガを破壊しかねない「危うい数字」だった。数は同じでも、両者が見ている風景は違った。
衆院選を経ても、政界再編が起きなければ、参院の各党の勢力図は来年夏の参院選まで変わらない。極言すれば、仮に「大阪維新の会」が衆院で過半数をとっても、参院の議席はゼロ。もう少し現実的に眺めると、自民党は衆院選で政権復帰を伺う数を得ても、参院で多数を占めない限りあらゆる法案の成立が見通せず、「与党のうまみ」を十分に甘受できない。
参院で過半数を確保するには122が必要だが、現状では民主党も自民党も90人に届かず、公明党は19人。参院の数から逆算すると、衆院選後の民自公連立政権は現実味を帯びる。その場合、民主党は与党第2党となる公算が大きい。「第2自民党」に成り下がった民主党に国民が再び歓呼することはなかろう。