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円安株高の主因はアベノミクスではない

 金融市場関係者であれば、当然のごとくチェックしていることでも、金融にあまり関わりの無い人にとっては、金融に関する最新情報はテレビや新聞などのマスコミから伝わる物を鵜呑みにしがちかと思われる。

 たしかに政権交代への期待感が、円安を背景として株高を演出した要因のひとつであることは確かである。しかし、そもそもこの円安そのものは日銀による追加緩和期待だけが背景で起きたものではない。たとえ政権交代はなくとも、円は売られやすい地合となっていたことも認識しておくべきかと思われる。


 ここにきての円安の直接的な理由は、これまでの極端な円高の動きの修正が入ってきたためである。それにはリーマン・ショックが冷めやらぬ中で発生したギリシャを主体とした欧州の信用不安が、ECBとともに独仏を中心としたユーロ諸国の必死の努力により、少なくともユーロ崩壊といった最悪の状況に陥る可能性が後退したことが大きい。

 そもそも何故、円高の動きが強まったのかを振り返ってほしい。これは日本のデフレ圧力が強まったとか、欧米に比べて金融緩和の度合いが低かったことが主因ではない。リーマン・ショックの際も日本への直接的な影響は限定的であったことや、ユーロの信用不安も加わって当初はドルから、その後はユーロからの逃避的な動き、つまりはリスク回避の動きが円高の主因であったはずである。従っていくら為替介入をしようが、根本的なリスク要因が排除されなければ、円高基調を止めることはできなかった。


 そして今回の円安への反転も為替介入等によるものではないことは明らかである。それは根本的なリスク要因が排除されつつあることが最大の要因である。そして、世界的に東京株式市場の反発が出遅れていたのは、この円高が大きな要因となっていた。円高という足かせが外れてきたことで、株式市場も息を吹き返し日経平均は1万円の大台を回復したのである。

 このあたりの背景説明をしっかりやっておかないと、まるでアベノミクスが円安株高を招いた救世主の如くイメージされかねない。日銀が仕事をしてこなかったから円高を招いたといった認識が強まり、日銀の独立性を失わせ、さらに財政ファイナンスを意識させるような動きを強めると、今度は日本が世界的なリスク要因になりかねない。