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【書評】『ノーベル経済学賞の40年 20世紀経済思想史入門』上・下

実は経済学賞は、「ノーベル賞」ではない。正式名称は、「アルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞」という。スウェーデン国立銀行が資金の提供をノーベル財団に申し込み、1969年に新設されたもので、正式にはノーベル賞には入らない。もちろん記念講演や授賞式も、ほかの賞と一緒に行われているし、本書の日本語題名のように「ノーベル経済学賞」と表記されるのが一般的だろう。だが、ノーベル財団では、「経済学賞」の表記が用いられている。

 著者によれば、経済学賞の選考は極度に歪(ゆが)んでいるという。特に市場を過度に重視している経済学者を積極的に選び、またシカゴ大学など特定の大学に受賞者を集中させてしまっている。もちろん特定の大学に受賞者が集まってもそれ自体が悪いわけではない。著者は、シカゴ大学を中心にした経済学が、現実世界をうまく説明していないか、あるいは多くの場合は弊害すらももたらしていると断罪している。特にミルトン・フリードマンやその伝統に立つ経済学者たちの考えは念入りに批判されている。他方で、市場経済を批判的に分析し、生前受賞をのがしたケネス・ガルブレイスジョーン・ロビンソンらの復権を選考委員会はなんらかの形で行うべきだとも提案している。