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〔アングル〕「アベノミクス」による円安が加速、日本のバーゲンセールを警戒

 現在、日本資産を保有している海外勢にとって円安は保有資産の目減りを意味するが、これから買おうとしている場合には、円安はどんどん価格を下げてくれることになる。海外勢の日本株買いに沸くマーケットだが、「円安は日本の資産価格を押し下げ、海外勢にとって日本のバーゲンセールが始まったことを意味する」(東海東京証券のチーフエコノミスト、斎藤満氏)と警戒する声も少なくない。

 日本のGDP(国内総生産)の約13%を占める輸出型企業にとって円安は恩恵だが、残りの87%にとっては原油高、商品高などコスト増につながる。円安政策を進める安倍政権は国内の13%に配慮して政策運営をしているともいえ、マーケットからは「安倍政権は円安になれば全ての問題が解決するという誤った確信のもとに政策を組んでいる」(国内機関投資家)との批判も出ている。

 安倍政権では、金融政策に過剰とも言える期待が目立つ。安倍晋三首相は11日午前、緊急経済対策の決定を受けて記者会見し、「長引くデフレ・円高からの脱却が決定的に重要だ」と指摘。金融政策について「デフレ・円高脱却には、政府・日銀の連携による大胆な金融政策が不可欠だ」と述べ、日銀に金融政策での対応を求めた。

 
 しかし、名目金利がゼロ近辺にまで低下するなか、金融政策に景気を後押しする力はほとんど残っていないとの見方も多い。「金融政策には、ブレーキコントロール(景気過熱の制御)の機能は備わっているが、アクセルをふかす機能はない」(斎藤氏)。


 需要を掘り起こすのは本来、財政政策の役割だが、この日決定された緊急経済対策は旧態依然とした公共事業が目立った。過去20年の日本では、公共事業に傾斜した景気対策は一時的に景気を押し上げるものの、一時的な景気回復による税収増では借金をカバーしきれないため、結果として将来に負担を残してきた。


 需要が乏しいなかで、積極的な金融緩和を実施しても、供給されたマネーが実体経済をけん引する「生きガネ」にはならず、「金融村と債務を発行する財務省の間でぐるぐる回るだけの構造は、日本のみならず欧米諸国も直面する問題だ」とマーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表、金融・貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は述べる。

 過去1年半の間ドル/円はほぼ70円台後半の狭い値幅で推移し、「いわば手垢がついていない通貨ペアだった」と亀井氏は振り返る。だが、日本の総選挙やFOMC議事録など「(円安を構成する」ジグゾーパズルのピースが集まったことで投機の対象として躍り出て、実需を伴わない、モメンタムだけの円安が進行している」という。

 
 こうした円安トレンドは少なからぬ参加者から、調整があってしかるべきと見られているが、これまではほぼ一本調子の基調が続いており、「円売りの潮流にに乗らないと損をする」(外銀)状況が継続している。

 
 ただ、為替はあくまで2カ国通貨の相対的なレートだ。2期目に入ったオバマ政権は輸出促進政策を引き続き掲げるとみられており、日本が今後も円安政策を基軸に据えた政策を続ければ、国際舞台でも批判を浴びかねない。日銀が無謀なアセット拡大を進めれば、国内外で証券バブルを助長し、資産インフレのリスクを拡大するという副作用が出る可能性もある。

 
 日銀は21、22日に開く金融政策決定会合で物価目標を1%から2%に引き上げるとともに追加の金融緩和措置を検討する見通しだが、その後、米国の財政の崖や米国債の格下げ問題などが浮上すれば、「今月末から来月にかけて、材料出尽くしで調整する可能性がある」(亀井氏)という。

 デフレ脱却を最優先課題に掲げる安倍政権では物価上昇が「善」であるとの認識がまかり通っているようにみえる。


 しかし、「インフレで実質的なメリットを受けるのは債務返済負担が軽減する政府と借金のある企業だけだ。一般国民にとってのインフレは、政府への所得移転を表し、増税と同じ効果をもたらす」と前出の斎藤氏は警鐘を鳴らす。


 景気拡大の結果として物価が上昇するのであれば問題ないが、経済が良くならずに物価だけが上昇すればスタグフレーションのリスクも高まる。


 「初めから物価上昇率だけを目標にするのはスタグフレーションになっても良いということで本末転倒だ。さらに、物価押し上げの道具として為替レート(円安)を使うのだとすれば、ボタンの掛け違いも甚く、危険を伴う政策である」(機関投資家)と、「アベノミクス」を一見歓迎しているようにみえる市場でも警戒感を示す参加者は少なくない。