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Interview:アン・リー 映画「ライフ・オブ・パイ」を監督 トラは人間映す“鏡”

 インドの動物園で育ったパイが、動物たちと移住先のカナダに渡る途中で船が難破、獰猛(どうもう)なベンガルトラとともに救命ボートで海に放り出される。ブッカー賞も受賞したヤン・マーテルの原作には多くのシンボルが織り込まれている。「パイが乗った貨物船はツィムツーム号というが、ツィムツームとは『カバラ』(ユダヤ教の伝統をもとにした神秘思想)では『収縮する』という意味だ。『大きな存在の神の前で人間は小さくなる』ことを暗示している」と例を挙げる。「読後、映画向きではないと思った」という複雑な物語を、「シンプルに見せながら、見終わった後、観客に考えさせる映画にすることに挑戦した」。


 それを可能にしたのがトラだ。「私は、人間の対立や『どう生きるべきか』『正しいものは何か』をテーマにしながらドラマを演出してきた。映画監督は人間の内面を表出させ、見せなければいけない。トラはそのためのいい道具になった」と説明する。


 難破当初、パイはトラを恐れて救命ボートの船首にしがみつく。しかし、飢えや孤独の試練を経たパイは、トラと正面から向き合い、手なずけ、やがて友情まで感じるようになる。トラは、あどけない無垢(むく)なパイが、たくましい大人の男性へと成長する姿を映す鏡になっている。「ほかにもいろいろなシンボルを映画の中に入れている。ただ、それを説明しては面白くない。ぜひ、観客自らが見つけてほしい」