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ロシアと敵対しても金融街へのアクセスを禁止しようとしない英国の高度な戦略

 英BBCが報じたところによると、キャメロン首相が手にしていた内部文書には、ロンドンの金融センターにロシア人がアクセスできなくするような措置に対して否定的な見解が書かれていたという。


 キャメロン首相は表向きは、クリミア半島問題についてロシアが方針を変えなければ「大きな代償を支払うことになる」と警告していた。


 英国では、現在とそっくりの状況が160年前にも起こっていた。ロシアが拡張政策を取り、英仏と衝突したクリミア戦争である。ロマノフ王朝が支配していた当時のロシアは現在と同じく、クリミア半島の支配権をめぐって英仏と激しく争った。


 英ポンドは当時、国際的な基軸通貨であり、ロンドンの金融街(シティ)は現在のウォール街のような金融市場の中心地であった。当時のロシアの相対的な立場は今と同じであり、ロシアは経済面や金融面で欧州に大きく後れを取っていたのである。


 ロシアはクリミア戦争の戦費を自国で調達できず、ほぼ全額を敵国である英国のロンドンで調達していた。このため英国ではシティにおけるロシアの資金調達を禁止すべかどうか大激論となった。最終的には金融市場を押さえている方が交渉力が維持できるとして、ロシアによる戦費調達を黙認した。


 結局、戦争は明確な勝者がないまま、講話となったが、ロシアの前近代性が明らかとなり、最終的にはロマノフ王朝の滅亡につながったという意味でロシアの敗北であった。