ECBが現状維持、必要なら量的緩和の用意 | Reuters
主要政策金利であるリファイナンス金利は今回、予想通り0.15%に据え置かれた。下限金利の中銀預金金利もマイナス0.10%に、上限金利の限界貸出金利も0.40%にそれぞれ据え置きとなった。
前回の理事会では、マイナスの中銀預金金利や銀行融資の促進を目指した長期資金供給オペ実施などを決定したが、ドラギ総裁はこの日の理事会後の記者会見で「向こう数カ月間のオペで緩和の度合いは増すとともに、銀行による貸し出しを後押しすることになる」と指摘。「ECBによる一連の措置が経済効果を発揮していけば、それを支えにインフレ率も2%近くに復帰していくだろう」と語った。
ただ、6月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)速報値は、前年比0.5%の伸びと、9カ月連続で1%を下回る「危険領域」(ドラギ総裁)にとどまっており、ECBが中期的な目標とする2%をやや下回る水準にはほど遠い状態が続いている。
QEについては、ECB理事会としてこれを行う用意があるとの考えで一致していると強調。「ECBの主要金利は、現在のインフレ見通しに鑑みて、長期間現在の水準にとどまる見通しだ」とした上で「理事会はまた、低インフレ期間が過度に長引くリスクに対し、さらなる対応が必要な場合、責務の範囲内において非標準的措置を用いる方針で一致している」とした。
景気回復へのリスクは引き続き総じて下向きとの見方も示した。
ECBは、前月決定した一連の措置が完全に効果を表すまでにはしばらく時間がかかるとの見方を示唆しており、市場でも、年内にQEが行われるとの見方はほとんどない。
ベレンベルク銀のエコノミスト、クリスティアン・シュルツ氏は「6月の利下げを受け、ECBは効果を見極めるため、おそらく年末まで様子見を続けるだろう」と述べた。
金利に関する先行きの指針(フォワードガイダンス)について、ドラギ総裁は今回、特に目新しい内容は示さず、2016年末までの全額資金供給とフォワードガイダンスの期間に直接的な関連性はないと述べるにとどめた。
為替に関しては、ECBとして多大な関心を持って注視しているとした上で「為替レートは政策目標ではない」ものの「ECBの見通しや物価安定にとって非常に重要であることは言うまでもない」と述べた。前日にはフランスのバルス首相が「過大評価された」ユーロの是正に向けECBに対して支援を求めたばかり。
的を絞った長期リファイナンスオペ(TLTRO)については、今年は9月18日と12月11日に実施し、2015年3月から16年6月には6回実施すると表明。額は1兆ユーロに到達する可能性があり、銀行は基準額を上回って貸し出せば追加供給を受けることが可能だが、貸し出し基準額を満たしたことを証明する必要があり、そうでなければ返済義務が生じると述べた。
さらに、これまで月次で開催している理事会を、来年以降、6週間ごとの開催に変更するほか、FRBや英中銀と同様、理事会の議事録を公表するとした。
低金利長期間続く、ユーロ圏経済がリスク直面=ECB総裁 | Reuters
総裁は「ユーロ圏の経済見通しをめぐるリスクは、依然下振れ傾向にある」と指摘。「エネルギー価格やユーロ圏製品に対する需要などを通じ、特に地政学リスクや新興国市場の状況、国際金融市場が経済環境に悪影響を及ぼす可能性がある」と述べた。
このことから、過去最低水準となっている現在の金利水準は変わらない公算が大きいと述べた。
総裁は「現時点のインフレ見通しから、ECBの主要金利はかなりの期間、現在の水準にとどまる見込みだ」と指摘。「低インフレの期間が過度に長引くリスクにさらに対処することが必要になれば、責務の範囲内で非伝統的手段も講じるとのコミットメントで、理事会は一致している」と話した。
<為替レート>
為替レートは政策目標ではないが、重要になっている。物価安定の見通しには当然、非常に重要だ。
現在の低インフレの要因に目を向けて、例えば3年前と比べた場合、2つの段階がある。第1段階では、1年、1年半の間、石油価格と食品価格が主なインフレ要因だった。このため、現在までのインフレ率低下の3分の2をこれらの要因が占めた。
1年半が過ぎてからは、為替レートが要因となった。エネルギーの寄与が徐々に低下したからだ。当然ながら、この二つの要素は足して考えるわけにいかない。為替レートの寄与は石油・エネルギー価格を通じてもみられるからだ。
<市場の期待>
われわれの仕事が終わったとは当然考えていない。全くそのようなことはない。理事会は非標準的措置も用いる決意で一致していると再び表明する。理事会は金利を現在の水準で長期間維持することも改めて表明した。それ故、われわれの仕事は終わっていない。
問題は、毎月決まって行動への期待がわれわれに向けられるべきかだ。行動への期待自体が市場の一定の動きにつながるが、その動きはファンダメンタルズと無関係あるいはほとんど関係ないかもしれない。期待した結果が市場に跳ね返ってくる状態に陥る可能性がある。
<リスクは下向き>
ユーロ圏経済の見通しをめぐるリスクは依然下向きだ。エネルギー価格やユーロ圏製品への需要などを通じて、地政学リスクや新興国経済の動向、国際金融市場が経済環境にマイナスの影響を及ぼす可能性がある。
<経済状況>
6月までの経済指標は、2014年第2・四半期も極めて緩やかな回復が継続していることを示唆している。
今後はユーロ圏内の需要が、金融政策スタンスの一段の緩和や金融状況の改善継続など、多くの要因に支援される見通しだ。
ECBの主要金利は、現在のインフレ見通しに鑑みて、長期間現在の水準にとどまる見通しだ。理事会はまた、低インフレ期間が過度に長引くリスクに対し、さらなる対応が必要な場合、責務の範囲内において非標準的措置を用いる方針で一致している。
<金融政策スタンス>
先月決定した一連の金融政策は金融政策スタンスの一段の緩和につながった。今後数カ月で実施するオペが緩和策を強化し、銀行貸し出しを後押しする。
<インフレ期待>
ユーロ圏の中長期インフレ期待は、われわれが目標とする2%を下回るが2%に近い水準に沿って引き続きしっかりと抑制されている。
<緩やかな回復>
最新の情報によると、ユーロ圏経済は第2・四半期に緩やかな回復を続けたもようで、インフレ率は低水準で、信用供与の伸びは抑えられていた。
<ABS買い入れプログラム>
わたしが以前に述べたように、われわれは銀行貸出チャネルの機能不全を改善する手段として、資産担保証券(ABS)に興味を持っている。われわれは銀行の資金を実体経済、特により具体的には中小企業に流し込みたいと考えているので、興味を抱いている。だからそれは実体のあるABSでなければならない。この買い入れプログラムの概念の中には、債務担保証券(CDO)ないしデリバティブ(金融派生商品)といったたぐいのものは存在しない。
買い入れ対象は、金融危機の数年前までの欧州の証券化市場がそうであったように、シンプルであるべきだ。そして実際、最も複雑な仕組み商品は明らかに、欧州では生み出されなかった。銀行や他の欧州の投資家はこうした商品に投資したが、これらの商品が欧州で組成されたことはほとんどない。また買い入れ対象は透明性も備えていなければならない。
証券化が悪名を得てしまった理由の1つは、一部の商品が非常に複雑で妥当な価格設定が不可能になってしまったことがあった。だからこそこの新しい概念においては、透明性が重要になるのだ。