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マレーシア航空機撃墜事件 誰がどうやって撃墜したのか?真相は究明できるか?

現在、MH17便が搭載していたフライトレコーダーを政権側が回収したのか親露派側が回収したのかが問題になっているが、仮にこれが発見されたとしても、撃墜直前の状況が判明するだけで、撃墜の主体がどこであるか、といったことまでは明らかにはなるまい。


また、民間機にはミサイルの接近を警告する警戒システムなども装備されていないため、実際にミサイルが当たるまでパイロットが全く状況を認識していなかった可能性さえ考えられる(MH17が何のSOSも出さずに消息を絶っていることは、この可能性を示唆する)。


だが、米国のバイデン副大統領やウクライナのポロシェンコ大統領は、事件の直後から「これは事故ではなく撃墜だ」と述べたり、ブーク防空システムが使用されたと具体的に指摘するなど、非常に早い段階から断定的な発言を行っていた。


ポロシェンコ大統領については、前述のDNR側のネット上での書き込みや、ウクライナの情報機関が傍受したという親露派とロシア情報機関との通信記録(ただし、この記録の信憑性については現在の所、保留としたい)を根拠としているようだが、米国は何を根拠に早い段階でこれを「撃墜」と断定したのだろうか。


これについては、米国のハイテク偵察能力を総動員した結果と考えられる。


第1に、米国は敵の弾道ミサイル発射を最初の段階で発見するため、高感度の赤外線センサーを搭載した人工衛星を複数種類、軌道上に配備している。これらの中には弾道ミサイルだけでなく、比較的小型な防空システムの発射も探知できるものがあるとされており、前述した2001年のシベリア航空機撃墜事件でも、米国は衛星情報を根拠にウクライナ軍の誤射であると結論していた。今回の場合も、こうした早期警戒衛星を使用し、親露派支配地域でミサイルの発射熱を探知していた可能性は高い。


第2はレーダーである。米国防総省はレーダー情報によってミサイルが親露派の支配地域から発射されたことを掴んでいるとしているが、航空機に比べてずっと小さなミサイルを正確に探知・追尾したとなると、トルコに配備されているAN/TPY-2を使用したことが考えられる。AN/TPY-2は米軍のミサイル防衛の「眼」となるレーダーで、Xバンドの周波数帯を使用することにより、通常のレーダーよりも高精度で目標を把握することが可能だ。このレーダーは在日米軍にも配備されており、現在、青森県車力基地で1基が実戦配備に就いているが、さらに京都府にも追加配備の予定だ。あるいは、黒海に展開している米海軍のイージス艦が探知したことも考えられる(両者はデータリンクで接続されており、連携して機能する)。


第3は電子情報である。撃墜事件の直後、米空軍はイギリスのミルデンホール基地に展開させていたRC-135リベット・ジョイント電子偵察機を離陸させ、ウクライナ付近に派遣した。これによって事件後の親露派の通信やレーダー電波の使用状況、各種信号情報などを収集したと考えられる。米国が、撃墜に使用された兵器はブークだと断定している背景には、こうした電子情報からブーク用レーダーの特徴と合致する周波数などを探知していた可能性が考えられる。

実際問題として、いくら上記のような活動の「結果」だけを「証拠がある!」と突きつけても「ねつ造だ」と言われてしまえばそれまでである。もちろん、生データを解析することができればよいが、機密の塊である弾道ミサイル警戒システムや電子偵察機の詳しい性能などを明かしてしまうことになるため、まず現実的な話ではない。


したがって、今回の件を巡っては、まだしばらくウクライナ、ロシア、親露派、そして西側諸国の間で責任の所在を巡る非難の応酬が続くだろう。