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未来を予測するマシン、量子コンピューターの「いま」 - 産経ニュース

チップの発達の歴史は、回路と回路の隙間を細くする技術の発達と軌を一にする。配線と配線の距離を縮めることでチップはより小さくなり、処理速度も速くなった。いまでは、原子の大きさとほとんど変わらない4nmまで縮めてきた。


しかし極端に近づいたため、配線通りに進むべき電子が隣の配線に飛び出てしまい、回路から回路へジャンプする現象が起こり始めている。「リーク電流」と呼ばれるこの現象は、機器の誤作動の原因となる。高速化・極小化を突き詰めるほど、リーク電流が増えるというジレンマに陥っているのだ。


つまり、現在の技術では「ムーアの法則」は限界を迎えつつあるのだ。カーツワイル教授の予測どおり、人間の知能を超えるコンピューターが生まれるとしても、それは現在の技術の延長線上にあるとは考えにくい。

その限界を突破する可能性を秘めるのが量子コンピューターである。通常のコンピューターでは「1」と「0」という数字の羅列で計算が行われ、二進数の「1001」と「0101」は異なる計算と認識される。そうなると、せいぜい4×3と3×4という2つの数式は同じものとして認識されても、4×4と4×5のように構成する数字が変わってしまえば、同じものとは認識されず、計算は別々に実行される。


一方、量子コンピューターには「0」と「1」を重ね合わせて、同時に扱うという概念が導入される。これを「量子ビット」といい、先ほどの「1001」と「0101」が同じ計算として認識される。何通りにも及ぶ複雑な計算を1回の計算で行うことが可能となり、計算量は飛躍的に減少する。


もちろん、現在のコンピューターにも同じような仕組みは存在する。だが、量子ビットの概念は、それとは比較にならないほどの圧倒的な速度を実現することができる。ビッグデータの解析も、未来を予測するための確率計算も、無数とも言える量のデータの組み合わせが存在する。これを従来のコンピューターで1つひとつ計算していては、それこそ膨大な時間が必要となる。量子コンピューターを使用すれば、たちどころに解が示されることになる。

とはいえ、その開発は遅々として進んでいない。原理は理解されても、実現に向けた課題が山積しているからだ。最大のネックは量子ビットを扱う技術である。量子ビットの操作は、非常に繊細で高度な技術が必要となる。コンピューターメーカー各社がさまざまな方法で技術開発に挑んでいるが、ようやく3個の量子ビットを並べることに成功した程度で、実験室の域を出ていない。専門家によると、実用化には20年から50年はかかるだろうという意見が大勢を占める。

その閉塞感を打ち破ろうとしているのが、カナダのコンピューター企業「D-Wave Systems」だ。D-Waveは2011年5月に「世界初の商用量子コンピューター」と謳った「D-Wave One」を発売した。続く13年5月には、512量子ビットを実現した「D-Wave Two」を世に送り出し、これをNASAやグーグルが購入したことでも話題となった。


D-Waveのジェレミーヒルトン副社長は、自社の技術に自信をもっているという。


「古典的な演算を用いることなく、量子力学を利用したまったく新しいパラダイムを開発したという事実は、非常に意義ある成果だと考えています。しかも、その新たなパラダイムによって古典的なコンピューターと同等な性能、場合によってはより優れた性能を実現できたことについても、特に重要な意味をもちます。わたしたちは現在1,000量子ビットプロセッサーを研究していて、2,000量子ビットの実現に向けたロードマップの上を歩んでいるのです」

この成果を批判的に見る向きも少なくない。D-Waveのシステムが、純粋な量子コンピューターとは異なる仕組みを採用しているからだ。D-Waveは、彼らが「古典的」と呼ぶ従来の半導体技術をベースに、量子コンピューター的な能力を加える仕組みでシステムを構築している。同業他社からは「本物の量子コンピューターではない」「スーパーコンピューターと処理速度が変わらない」と批判されている。


ただ、この批判も的を射ているわけではない。D-Waveの量子コンピューターとスーパーコンピューターはそもそもその構造が異なるので、同じプログラムを動作させることができない。厳密に比較検討する方法がないので、どちらが速いかという論争は意味をもたないのだ。

量子コンピューターの未来はどうなっていくのか。D-Waveのヒルトン副社長は次のように語る。


「エネルギーであれ健康であれ、人間社会にはさまざまな課題が山積しています。わたしたちはこれまで、古典的テクノロジーがとてつもない進歩をもたらした事実を見てきました。しかしながら、古典的テクノロジーは頓挫し、横ばいになり始めています。量子テクノロジーは、新たな力と性能をこの分野にもち込み、横ばいになっている課題解決を再び進歩させていくことでしょう。わたしたちは、人間社会にとって深く重要な領域において、とてつもない進歩を見ることになると思います」

NHKスペシャル|NEXT WORLD 私たちの未来

総合テレビ 2015年1月3日(土)〜 2月1日(日)全5回

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