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山本芳久

岩下壮一の著作のタイトル「信仰の遺産」が意味しているのは、狭義での宗教的な「信仰」のみではなく、人類の思想や知そのものの伝統的性格と共同体的性格です。我々に必要な智慧は、一人一人の個人に属するというよりは、先人から受け継ぎながら後人へと受け渡していく公共的な寄託物だという発想です

山本芳久

内村、矢内原、南原繁のような無教会や、新渡戸稲造、植村正久、新島襄といったプロテスタントと比べて、近代日本のカトリックの思想家は、簡単にアクセスできるテクストがありませんでした。岩波文庫に岩下壮一『信仰の遺産』が入り、近代日本思想史へのより厚みのある理解が生まれる基盤ができました

山本芳久

岩下壮一『信仰の遺産』(岩波文庫)の各章には、簡潔な要旨を、巻末の注解に付しておきましたので、そこから読み始めるのをお薦めします。岩下に対しては様々な評価がありうると思いますが、今回の文庫化の仕事では、そうした評価の前提となるテクストの読みが可能となるための基盤作りを心がけました

山本芳久

近代の日本においてキリスト教がさほど多くの人に受容されなかった原因として、日本文化とキリスト教がなじみやすくないということがしばしば挙げられますが、原因はそれだけではありません。キリスト教の基盤が既に揺らぎ始めている19世紀という時代に、キリスト教は揺らぎと共に輸入されたのです。