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パワーシフト?欧州が米国を捨て、中国についた日 AIIB参加に動いた欧州諸国の思惑|ロシアから見た「正義」 “反逆者”プーチンの挑戦|ダイヤモンド・オンライン

3月12日、全世界に衝撃が走った。英国はこの日、米国の制止を振り切り、中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への参加を表明したのだ。米国は、「もっとも緊密な同盟国」の「裏切り」に動揺した。しかし、それは「始まり」に過ぎなかった。

 その後、英国に続いてドイツ、フランス、イタリア、スイス、ルクセンブルグが、続々とAIIBへの参加を決めたのだ。これは、「欧州が米国を捨て、中国についた」ことを意味する。

 中国への評価が極めて低い日本では、それほど重視されていないこの出来事。しかし、世界的には「歴史的大事件」といわれている。

 1991年12月25日、ソ連が崩壊し、戦後長くつづいた「冷戦時代」「米ソ二極時代」は終わった。これは、米国による「一極時代」の到来を意味していた。一方、欧州も新しい時代を迎えた。欧州は冷戦時代、西半分を米国に、東半分をソ連に支配されていた。しかし、ソ連崩壊で、西欧と東欧が一つになる道が開けたのだ。


「怖い東の白熊(ソ連)の死」。これは、世界から欧州の脅威が消滅したことを意味する。つまり、もはや米国に守ってもらう必要はない。そして、欧州の指導者たちは、大きな野望を抱いた。「もう一度、欧州に覇権を取り戻そう!」。

 どうやって?著名なフランスの経済学者ジャック・アタリは、こう言っている。「通貨統合・政治の統一・東欧やトルコへのEC(=現在のEU)拡大。これらが実現できれば、欧州は二一世紀米国をしのぐ大国になれるだろう」。かつてのように欧州の一国だけで覇権をとることは、不可能。しかし、西欧と東欧が一体化し「一つの国」になれば、「米国から覇権を奪える」というのだ。

 そして実際、欧州は着々と計画を実行していった。1999年1月1日、「ドル基軸通貨体制」を崩壊させる可能性のある通貨「ユーロ」が誕生した。


 衝撃は、さらに続く。2000年9月24日、イラクフセイン大統領(当時)は、「石油代金として今後一切ドルは受け取らない」「今後は、ユーロで取引する」と宣言。そして、同年11月、実際に決済通貨をかえてしまった。

フセインをそそのかしたのは、欧州覇権を目指したフランスのシラク大統領(当時)だったといわれている。米国は激怒し、「フセインアルカイダを支援している」「大量破壊兵器保有している」などとイチャモンをつけ、イラクを攻撃しようとした(米上院情報特別委員会は06年9月8日、イラク戦争に関する報告書を発表。上記2つの理由は根拠がなかったことを公式に認めた)。


 フランスは、志を同じくするドイツ、そしてロシア、中国を巻き込み、国連安保理イラク戦争に反対する。しかし、米国は、安保理を無視してイラク戦争を開始、フセイン政権を打倒した。

イラク戦争を巡る「欧州の乱」をなんとか力技で平定した米国は、次にプーチン・ロシアを標的に選んだ。米ロは03年、「イラク問題」「ユコス問題」「グルジアバラ革命」、04年「ウクライナオレンジ革命」、05年「キルギスチューリップ革命」などで、ことごとく対立。原油高がつづきイケイケのプーチンは07年6月、「ドル体制をぶち壊して、ルーブルを世界通貨にする!」と宣言した。

 結局、米ロ対立は、「実際の戦争」に発展する。 それが、08年8月に起こった「ロシア―グルジア戦争」である(03年の革命で政権についたサアカシビリ・グルジア大統領(当時)は、親米反ロ政治家として知られている。現在は、反ロ国ウクライナの大統領顧問を務める)。

 幸いこの戦争は長つづきしなかった。翌月、「リーマンショック」から「100年に1度の大不況」が起こったからだ。世界的経済危機で、米国は沈んだ。ロシアでは、「08年で一つの時代が終わり、09年から世界は新しい時代に突入した」といわれる。米国とロシアは和解し「再起動時代」が到来した。


 では、09年から世界は、どんな時代に入ったのだろうか?ロシアでは、「米一極時代が終わり、多極時代になった」という。

そういう言い方もあるだろうが、世界では別の表現が流行した。そう、「G2時代」、つまり「米中時代」という言葉だ。


 中国は、世界的に景気が最悪だった09年、9%を超える成長を果たし、「ひとり勝ち」状態になった。同国のGDPは2010年、日本を越え世界2位に浮上。現在は、すでに10兆ドルを超えたとされている。つまり、中国のGDPは、世界3位日本の2倍になっている(もちろん、統計上のウソを指摘する声もあるが)。


 そして、軍事費も米国に次いで2位。世界は、事実として、経済力(=GDP)、軍事費世界1の米国と2位の中国を軸に回っている。しかも、「衰退する米国」「浮上する中国」というトレンドがはっきり見える。残念ながら、これは厳然たる事実なのだ。

 このように、長期的に衰退の方向がはっきりしている米国。悪いことに、オバマ政権は、没落をますます加速させるような言動を繰り返している。たとえば、米国のバイデン副大統領は2013年8月27日、「シリアを攻撃する」と宣言した。理由は、シリアの独裁者アサドが、反アサド派に対し「化学兵器を使用したから」。


 ところが、この根拠、イラク戦争時と同様「ウソ」だった可能性がある。

国連の調査によると、化学兵器を使ったのは、なんと「反アサド派」だというのだ。もちろん、アサドが化学兵器を使った可能性が全くないとはいえない。しかし米国は、この国連報告を完全に無視し、「アサド派だけが化学兵器を使った」と世界的プロパガンダを展開した。


プーチンは、米国が「戦争宣言」をするずっと前から、「化学兵器を使ったのはアサドではなく、『反アサド派』のほうだ」とあちこちで語り、国際世論に影響を与えてきた。そのせいか、バイデンが「シリア攻撃宣言」をしたわずか2日後の8月29日、英国は「シリア攻撃断念」の決定を下す。


 常に米国の戦争につき合ってきた英国の「裏切り」。世界では、「米英の『特別な関係』の終わりか?」と騒がれた。「誰も一緒に戦ってくれない」ことを悟ったオバマは同年9月10日、シリア攻撃を止める決定を下した。

 シリア問題でバラバラになった米国と欧州は2014年3月、ロシアの「クリミア併合」によって、再度一体化する。米国は、欧州と日本を巻き込み、「対ロシア制裁」を強化しつづけている。一方で中国はロシア側についたので、世界の対立構造は「欧米日 対 中ロ」になった。


 ところが、強固にみえる米国と欧州の結束に、ほころびが見えている。


 政府軍と「親ロシア派」の内戦状態にあるウクライナ。昨年9月の停戦が(予想通り)破られた後、今年2月11日に、二度目の停戦合意が実現した。これを仲介したのが、ロシア、ドイツ、フランスである。なぜドイツとフランスは、ウクライナの停戦を望んだのか?


 答えは、米国が「ウクライナに殺傷能力のある武器を提供する」方針を示したこと。米国が最新の武器を提供すれば、ウクライナ軍は強くなるだろう。すると、ロシアはバランスをとるために親ロシア派に武器を渡し、戦いはどんどんエスカレートしていく。そして最終的に、ロシアと欧米NATO軍の戦争に発展しかねない。


 しかし、戦場になるのは米国ではなく欧州である。それで、いままでオバマに従ってきたドイツとフランスは、慌てて和平に動いたのだ。「停戦合意」直前の2月9日、メルケル首相はワシントンでオバマと会談している。ここでも、「好戦的な米国」「停戦を求めるドイツ」という考えの違いが明らかになった。

 このように、欧州では、「米国に従っていると、また欧州が戦場になりかねない」「つきあってられない」というムードがひろがりつつある。

 ここまで、米国衰退の長期的流れと、それを加速させるオバマ政権の失策について見てきた。その結果が今回の「AIIB事件」である。

 米国のルー財務長官の要請を、英国が「一蹴した」ことがはっきり書かれている。つまり欧州諸国は、中国の影響力拡大を阻止したい米国よりも、アジアへのインフラ投資による「儲け」を重視した。米国のパワーが衰えを象徴するできごとである。

 ここまでで、「米国の衰退は長期的トレンド」であること、そして「オバマ政権の失策が没落を加速させていること」をご理解いただけただろう。