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「デジタル教科書」導入の検討始まる NHKニュース

文部科学省が設けた「デジタル教科書」の検討会議は12日、初会合を開き、教育の専門家や教科書会社の担当者など、15人の委員が出席しました。
現在、教育現場では情報端末を使ったデジタル教材が普及しつつありますが、現在の教育制度は教科書が「紙」の本であることを前提としていることから、文部科学省の担当者は、「デジタル教科書」を導入する場合の法的な位置付けなどを検討するよう求めました。
出席した委員からは、「教員の指導力やデジタル教科書の質の確保が欠かせない」とか、「紙の教科書をなくしてすべてデジタル化するのでなく、両方のよい面を生かすべきだ」などといった意見が出ていました。
検討会議は、「デジタル教科書」に期待される教育上の効果や、費用などの面で、現在、無償で配布されている小中学校の教科書と同様に扱えるかどうか、さらに動画や音声を含めた検定制度の在り方などを議論し、来年中に報告をまとめることにしています。
会議の座長を務める東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授は、「家庭にもさまざまな情報端末が入り、いつでも情報にアクセスできる時代の教科書がどうあるべきか、課題を洗い出し、子どもたちに豊かな学習環境を提供できるよう議論していきたい」と話しています。

「デジタル教科書」の導入が検討される背景には、情報化の進展に伴って学校教育の現場でも大型ディスプレ−に教材などを映し出す電子黒板やタブレット端末などが普及してきたことがあります。
文部科学省のまとめでは、去年3月の時点で電子黒板は全国の公立の小中学校のおよそ8割で導入されているほか、タブレット端末も合わせて7万2000台余りが導入されています。
ただ、こうした情報機器は、授業で使う図や絵などを拡大したり、インターネットを使って調べものをしたりするといった、いわば補助的な役割にとどまっています。
これから議論される「デジタル教科書」は、子ども1人に1台のタブレット端末を用意し、教科書の内容をすべて取り込んで学ぶことを想定しています。
一方、「デジタル教科書」は新たな市場分野としても関心を集めています。
去年6月には、政府が今後進める規制緩和や制度改革をまとめた「規制改革実施計画」の項目の中に、「デジタル教科書」の導入に向けた検討が盛り込まれ、来年度・平成28年度までに結論を出すとしています。
ことし2月には教育や情報通信に関連する企業や団体が協議会を発足させ、規格の統一によるコストの低減など、「デジタル教科書」の実用化に向けた議論を進めています。

東京・文京区にある筑波大学附属小学校では、6年生の1クラスで教科書会社が作ったデジタル教科書を使って試験的な授業を行っています。
デジタル教科書を使っているのは国語の授業で、子どもたちが使う端末の中に教科書のソフトが入っています。
画面上の文章に線を引くことができるほか、漢字の書き順を示すアニメーションが表示されます。
11日の授業では、自然に関する説明文の中で、耳で聞こえることを表現した文章には青い線を、目で見えることを表現した文章には赤い線を引いて色分けする課題が与えられ、子どもたちは専用のペンを使って慣れた手つきで書き込んでいました。
子どもたちが書き込んだ内容は大型ディスプレーの「電子黒板」に転送され、自分とほかの子の考えがどう違うのか、見比べることができます。
男子児童の1人は、「初めは難しかったけれど、だんだん慣れてきて楽になりました。今では紙の教科書よりデジタル教科書のほうが好きです」と話していました。
一方で、課題もあります。デジタル教科書を教科書として使うには1人1台ずつ端末が必要ですが、この学校ではコンピューター室にある端末を共用しているため、子どもたちは端末を持ち出すことができず、家で復習などをすることもできません。
また、授業で教科書を音読する際、子どもたちは紙の教科書と端末の好きなほうを選べますが、クラスの半数近くは紙の教科書を読んでいるということです。
さらに、現在、小中学校の教科書は無償で配布されていますが、デジタル教科書を導入する場合、多くの端末やソフトなどの導入にまとまった費用がかかります。
デジタル教科書で授業を行っている筑波大学附属小学校の青山由紀教諭は、「友達の考えを聞いてどんどん柔軟に考えを変える思考力が身につくので、デジタル教科書はとても有力なツールだと思う。しかし、タブレット端末にペンで書くだけでは書くべき文章量として足りないうえに、子どもはタイピングのスキルも高くないので、鉛筆とノートも欠かせない」と話していました。