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コラム:米FRB、新興国からの「スピルバック」に戦々恐々か | Reuters

米連邦準備理事会(FRB)は、自らの金融緩和策による諸外国への副作用(スピルオーバー)を気に病むことはなかった。しかし今後利上げに着手するに当たり、副作用の自国への跳ね返り(スピルバック)に戦々恐々となる日々を送ることになりそうだ。


スピルバックという言葉は国際通貨基金IMF)の「造語」で、新興国市場の輸入需要の低迷によって米国の生産が脅かされる状況を言い表す。FRBが利上げを進めれば、新興諸国から資本が逃げ出し、これら諸国は投資の中断や低成長を余儀なくされる恐れがある。これはスピルオーバーだ。しかし輸入国の経済が停滞すれば米国のソフトウエアや機器、サービスなどの輸出に跳ね返り、ただでさえ足取りの弱い景気回復に悪影響を及ぼしかねない。これがスピルバックであり、その影響はかなり甚大なものになりそうだ。


2000年代初頭以来、米国が潜在成長率を上回る成長を遂げた局面は、新興国市場向けの好調な輸出を伴っていた。米国の成長率が、生産性伸び率で規定されるところの潜在成長率を上回っていた住宅ブーム当時、新興国市場は沸騰する米消費需要をてこに生産能力を拡大した。これが翻って米国の輸出を促し、米国経済を一段と盛り立てた。しかし新興国市場の投資と輸入がかつてほどの活気に満ちていない現在、米国経済が生産性伸び率の弱さという限界を打ち破るほどのスピードで成長を遂げることは難しいだろう。


インフレ圧力が存在しない中でFRBが利上げに踏み切れば、新興国市場からのスピルバックはさらに厳しくなる恐れがある。新興国金利が上昇し、ドルが上昇すれば、米国の輸出は減少し、米成長率は潜在成長率を下回る水準に減速しかねない。


発展途上国への資本流入は昨年、総生産の5.4%に相当した。世界銀行の推計では、FRBが利上げを実施すれば資本流入は18─40%縮小する可能性がある。1990年代までであれば、この程度の落ち込みなら米国経済に深刻な打撃を及ぼさなかっただろう。しかし中国とインドを筆頭とする新興国市場は2011年から14年にかけて世界の経済成長の57%に寄与するまでになっている。米利上げによるスピルバックのリスクは、FRBが夜も眠れなくなるほど現実的かつ大きなものだ。