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コラム:アジアの民間債務膨張、緊縮財政で問題重症化 | Reuters

アジアの民間債務膨張をめぐる問題が重症化しようとしている。犯人は、薬が効きすぎて毒と化しつつある財政緊縮策だ。


日本を含むアジア太平洋地域では、経済規模上位12カ国の企業および家計の債務が国内総生産(GDP)合計の約168%に達し、2007年の147%から拡大した。


GDPの拡大ペースが債務のそれより遅いため、この比率は今後もじりじりと上昇していく見通しだ。翻って、債務増大はGDP成長率の低下をもたらす傾向がある。借金が増えれば消費者は支出を控え、企業は設備投資を抑制するからだ。節約は個々の企業や家計にとっては有意義だが、経済全体で見ると悲惨な結果をもたらす。


政府は通常、財政赤字を膨らませることによって経済を支援することができる。積極財政は債務増大と成長減速の悪循環を和らげたり、逆転させる効果を持つ。しかしアジア各国の政策当局は財政の手綱を緩めることを良しとしてこなかった。彼らはギリシャ債務危機の報道を見て、いよいよ不安を募らせている。アジア太平洋地域の公的債務の対GDP比率は2012年の90%から現在は65%まで縮小した。


しかし政府が債務をさらに圧縮すれば、アジア諸国は成長率とインフレ率が押し下げられ、「債務者監獄」に閉じ込められるかもしれない。不良債権が増えれば銀行は新規融資の抑制を迫られ、成長率は急降下しかねない。この悪循環を断ち切る策として、モルガン・スタンレーエコノミストチームは消費者への税控除・還付を通じた景気刺激策を提言している。この素晴らしい忠告に各国政府が耳を貸すとは思えない。


中国における財政拡張は、地方政府の財政悪化によって阻まれた。インドネシアとタイも公的支出を拡大しにくい状況だ。韓国は家計債務の増大が個人消費の足かせになっているというのに、人口の高齢化が進み当局は緊縮志向を強めている。インドは財政資金を使い果たし、財とサービスに対する新税に財政立て直しの望みを託しているところだ。


シンガポール政府はこれら諸国と一線を画している。国際通貨基金IMF)が強調した通り、2012年時点でGDP対比8%だった財政黒字は今年、2%未満に縮小する見通しとなっている。


アジアでは政府の助けを必要とする債務者が増えている。彼らが借金を増やしたのは、つまるところ中国経済が急拡大して天然資源の需要が伸びたからだ。その上、先進国の中央銀行は安価なマネーを大量供給してきた。西側が金融緩和によって世界の実質金利を低く抑えている間に、中国は借金を燃料として成長を続け、世界中に力強い所得の伸びをもたらしてくれるとの期待が背景にあった。住宅ローンの借り手は、実質金利が低い時には不動産投資が有利だと考えた。そしてだれもがドル安の永続をあてにして行動した。


これらの賭けがどれも裏目に出た。中国経済は減速した。これは借金を膨らませた中国企業には痛手で、オーストラリアからインドネシアに至るすべての国々の貿易所得を損ない、世界経済にデフレの衝撃をもたらした。


二日酔い程度の問題だったアジアの債務負担は、デフレの脅威によって重病へと発展した。アジア企業は売上高の伸び減速に支出抑制で対応している。実質金利が上昇しようとしている今、企業、家計を含めた民間のキャッシュフローが細っている。もちろんアジアの金融政策当局は利下げによって救いの手を差し伸べている。しかしインフレ率の低下速度は速まるばかりで、その結果、実質金利は上昇を続けている。


その影響の一つとして、これまで人気の資産クラスだった不動産が厄介者に姿を変えた。一方、米利上げ観測を背景にドルは上昇を続けている。これにより中国の対外債務9630億ドルの実質負担は増す。


各国政府は、今こそ金融政策の魔法にばかり頼るのを止め、財政の手綱を緩める時だ。これ以上の緊縮措置は経済にとって極めて有害な要素となりかねない。


#緊縮策