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コラム:中国から逃げ出したマネーの行方 | Reuters

マウイの不動産から高級美術品に至るまで、あらゆる資産の売り手がその売却代金を何に再投資するか──。中国からの資本逃避が世界にどのような影響を及ぼすかを見極める上で、鍵を握るのがこの点だ。


もちろんこれは、中国が資本逃避を黙認し続けた場合の話であって、その前提は確実とは程遠い。


中国人民銀行が7日に発表した8月の外貨準備は939億ドル減の3兆5570億ドルと、過去最大の減少を記録した。人民銀行が、資本逃避による人民元の下落と格闘した結果である。


中国がこの闘いをいつまで続け、そしてどのような手段で行うかによって、中国と世界経済への影響は大きく左右される。


中国を離れた資金がどこに向かって何を買うか、またそうした資金の所有者に資産を売却する人々がその代金をどう使うかも大きなインパクトをもたらす。世界の金利を変化させ、ひいては金融資産の価格も動かす可能性を秘めているのだ。

こうした資本逃避が市場にどう影響するかを見る上では、中国が史上最大の外貨準備を積み上げた方法と理由、そしてその過程で何を買ったかを思い出すことが重要だ。


外貨準備の積み上げは主に、人民元価格を押し下げて輸出を促進しようとした結果起こった。そうするために中国は、輸出で稼いだドルの多くを抱え込んでおく必要があった。人民銀行は保有するドルで最大限の運用利益を上げようとしたのではなく、単に経済政策や為替管理を目的としていた。その結果として中国は米国に対する最大の債権国となり、最低でも1兆5000億ドルの対米債権を抱えている。


従って現在のように中国から資金が逃避すると、人民銀行は元の下落を容認するか、もしくは大半が米国債である外貨準備を売って元の安定を図ることになる。人民銀が売却したドルを手にした人々はそれを国外に持ち出す。国外逃避の大半は規制破りの形で起こるが、起こることには変わりない。

ドルの量は変化しないが、ドルの新たな保有者が購入する物には大きな開きが出そうだ。一部の資金を米国債に投じる中国人もいるだろうが、多くは不動産や美術品などの資産を買うだろう。


ソシエテ・ジェネラルエコノミストチームは顧客向けノートで、中国が秩序なき資本流出から経済を守るために外貨準備の大幅な取り崩しを迫られるようなら、「米国のタームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)に顕著な影響をもたらしかねない」と指摘した。


その上で「しかしこれは、流出した資金がどの資産に向かうか次第でも変わってくる。中国の民間部門が米国債を買い、公的部門が米国債を売る場合には、中国の対外資産が公的部門から民間部門に移ったにすぎない。現実世界では、そんな完璧なマッチングは考えにくい」と分析している。


そこで物を言うのが、ピカソや高級マンションの売り手が何に資金を回すかだ。彼らとて、新たに手にした現金の束を米国債だけに投資しようとは思わないだろう。この結果、米国債の需要は減り、金利、とりわけ長期金利の上昇を招きそうだ。


併せて銘記したいのは、10年物米国債利回りが時に、世界で最も重要な価格と呼ばれることである。これには理由があって、米国債は他の金融資産の価格に特別な影響をもたらす。米国債価格が上昇すればするほど、リスク資産の価格は相対的に割安感を増す。逆もまた真なりだ。