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経営者は後継者にまず何を学ばせるべきか|小宮一慶の週末経営塾|ダイヤモンド・オンライン

 今回は、経営者にとって最も大切な「正しい考え方」をいかに後継者が理解するかということを説明します。


 まずは、マクロ経済の話を少しだけします。このことが今回のテーマに深く関係しているからです。安倍首相は名目GDP国内総生産)を2020年頃までに600兆円に引き上げることを目標に据えました。現状の名目GDPは約500兆円なので、100兆円程度の上乗せが必要ですが、日本の名目GDPは1990年代初頭以降、500兆円前後でほぼ横ばい状態を続けています。


 その間にアメリカは約3倍、中国は約15倍に伸びています。他の主要国も伸びており、日本のような名目GDPが伸びていない国はありません。その原因として冷戦構造の崩壊、バブルの崩壊というようなことが挙げられますが、それは諸外国だって経験していることです。なぜ日本だけが取り残されたのでしょう。


 私は次のような仮説を持っています。90年代初頭というのは、戦前の教育をまともに受けた人たちが政財界から引退しはじめた時期です。その時期と、GDPの伸びが止まった時期がぴったり一致していることに注目しています。


 良い悪いは別にして戦前の教育には生き方やリーダーシップの本質である「正しい考え方」に関わる教えが盛り込まれていました。戦後教育ではその部分が戦争と結びついたことですべて否定され、そのために、90年台初頭から正しい考え方を身に付けたリーダーが一気に減り、その結果日本だけが成長から取り残されて、GDPが伸び悩んでいるのではないでしょうか。


 もう少し歴史をさかのぼると、江戸時代のリーダーは武士階級でした。彼らは小さい頃から藩校へ通い儒教朱子学を学びました。白虎隊の学び舎だった「会津藩校 日新館」には藩士の子弟が10歳になると通ったと伝えられています。明治維新によって日本の近代学校教育が始まりましたが、そこでも、薩長土肥を中心とした旧武士層が政権の主流でしたから、儒教の考え考え方が重用されました。


 明治政府は、道徳教育を「修身」という科目で教えました。この「修身」という言葉は、儒教を代表する「四書五経」のひとつである『大学』にある言葉です。その冒頭では「大学の道は明徳を明らかにするに在り」と書かれています。明徳とは「高い徳」のことです。『大学』では、リーダーにとって絶対必要な徳を高めるためには「修身」が大切であると説きました。「修身・斉家・治国・平天下(天下を治めるにはまず自分の行いを正しくし、家庭をととのえ、国家を治め、天下を平和にする)」とあるように、まず自身の身を修めるという「修身」が必要なのです。


 さらにこれも良い悪いは別にして戦前教育では「教育勅語」を暗記させました。そこでは、親に孝養を尽くす、兄弟・姉妹は仲良くする、友を信じるといった12の徳目を教えています。これらの教育が戦争の歴史と重なったために戦後、GHQ連合国軍最高司令官総司令部)の占領政策によって、儒教的教育や道徳がすべて破棄されたことにより、戦後教育では正しい考えや正しい生き方を学ぶ機会が奪われてしまいました。


 戦後教育では道徳や生き方を学んでいないため、人生の本分や生き方を考えもしない経営者が多くなり、中小、大企業の経営者、官僚、政治家を問わず金儲けや権力志向に走り、信じられないような不正を働くリーダーもなくなりません。昨今の企業不正の根幹は、私はここにあると思っています。


 そこで経営者がリーダーとなる後継者を育てる場合、残念ながら現状の学校教育では正しい考えや正しい生き方を学ぶことができないため、親世代の経営者が子世代の後継者にそれらを学ばせる努力をしなければなりません。ただ、残念ながら、親世代もそういう教育を受けておらず、「考え方」の大切さを分かっていない人が多いのも事実です。

 私は経営者向けのセミナーなどでは、まず長い時を経て誰もが正しいと認めている中国の古典や仏教書などを読むようにアドバイスをしています。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20151005#1444042624
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20120412#1334225952