国際経済学が専門の早稲田大学大学院の浦田秀次郎教授は「試算は妥当な数字だと思う。重要なのは、TPPで日本経済の成長メカニズムが再活性化することだ。貿易や投資が拡大すれば生産性や賃金が上がって雇用も増え、日本経済の再興につながっていく。農業に対する負の影響もそれほど大きくはないのではないか」と指摘しました。そのうえで、浦田教授は「企業がTPPを活用して自由貿易を行い、投資を拡大しなければ、試算で示された数字は実現しない。政府は企業に情報を積極的に流すことが重要で、農業についてはTPP政策大綱に盛り込まれた政策が実施されることが重要だ」と述べました。
一方、農業経済学が専門の東京大学大学院の鈴木宣弘教授は「私の試算では、GDP=国内総生産はほとんど増えないし、農林水産物では1兆円を超える被害が出て、自動車分野もむしろマイナスの影響があるという結果になる」と述べました。そのうえで鈴木教授は「今回の政府の試算は非常に過大に評価されていると思う。『TPPはバラ色で、農業の被害も少ないから、少し国内対策をやれば済むんだ』という議論を展開するための、意図的で恣意(しい)的な数字だと言わざるをえない。政府は、まず農林水産物の実質的な被害額をきちんと示し、何をするべきか議論すべきだ」と指摘しました。