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御社が中小零細から抜け出せない理由 1996年7月5日、第5回盛和塾全国大会一日目講話抜粋|稲盛和夫経営講演選集(公開版) 「経営の父」が40年前に語っていたこと|ダイヤモンド・オンライン

盛和塾には、従業員数人でやっている中小零細企業の経営者から、何千人も雇用している大企業の経営者まで、非常に多岐にわたる方がいらっしゃいます。そこで今日は事業の原点に関わる、企業がプリミティブな事業から始まり、大企業へと成長していくプロセスについて話をします。

 そのように京都企業の歴史を見ていくと、京セラの場合もそうですが、面白いことに創業した社長はみな素人なのです。最初から立派な技術をもっていたわけでなく、たった一つの製品をつくることができただけでした。つまり、京都企業の創業者はみな、単品生産からスタートした素人なのです。

 The Global 1000 の中の経常利益率ランキングのトップ二八社に、京都企業が四社も入っている。ところが、その創業者はみな素人だったのです。技術もなく、最初は一種類の製品しかつくることができなかった。

 素人が経営し、技術がないために単品生産をしている会社とは、わかりやすく言えば、ラーメンしかつくれないラーメン屋のようなものです。「そばしかつくれません」「行商をすることしかできません」という人たちとも似ています。つまり、立派な技術やノウハウによって会社を大きくしたのではないのです。


二宮尊徳のように、鍬や鋤一本だけでも、朝から晩まで畑に出て農作物をつくっていれば、豊かになることができます。つまり、製品が一種類だけでも、誰よりもがんばって仕事をすれば、ラーメンであれ行商であれ成功できるのです。


 ただし、それだけでは中小零細企業としての成功にすぎません。「私はラーメン屋として成功しています」「私は行商として成功しています」といって満足してしまうと、中小零細のままです。

 再び京都企業に目を向けると、創業者たちは素人であるがゆえに、たいへん自由な発想をしました。彼らは既成の概念や慣習、慣例というものにとらわれません。素人であるが故に、「これはこのぐらいやっておけばよい」「これはこうする習わしなのです」という、慣例や慣習を知らず、とらわれることもない。だから、常に物事に疑問をはさみ、自由な発想をします。


 京都の土地柄も影響していると思います。京都はご承知のとおり、戦後しばらく蜷川虎三(にながわとらぞう)氏が知事を務め、共産党の府政が長く続きました。共産党がずっと強かったのは、京都は一二〇〇年もの歴史がある非常に古い保守的な街であると同時に、京都大学などを中心に、革新的で、反権力、反中央という面もあわせもつ街だからだと思います。


 ちょっと斜に構えて物事を考える、京都らしいインテリの生きざまとでも言うべきものを尊ぶ。つまり街の雰囲気そのものが革新的なものを好むのです。だから自由な発想ができる。学問の世界でも、日本人でノーベル賞を受賞した人には京都大学を出た人が多いのです。


 革新的なものを好む京都の土壌のもとで、技術をもたないが自由な発想のできる素人が単品生産の事業を始め、まさに二宮尊徳のように「至誠の感ずるところ、天地もこれが為に動く」ということを信じ、同時に、動機が真実であること、つまり善であることを大切にして、ひたむきに一生懸命にがんばる。そうして中小企業として成功していきました。


 ところが創業者たちは、一生懸命に仕事をがんばると同時に、危機感をもっていました。先の話に戻れば、「商品がラーメンだけでは、いつそばが流行って売れなくなるかもしれない」ということです。つまり単品生産のままでは、もしその単品が時代の変遷と共に駄目になったら会社はつぶれてしまう、という危機感を、常にもっていたのです。


 また、このくらいの事業規模では、従業員を食わせていくには足りないという飢餓感も常にもっていました。


二宮尊徳のように、真面目にひたむきに一生懸命がんばるだけではなく、「現在の単品生産のままでは、その単品が駄目になったときにうまくいかなくなる。何か副業のようなものをしなければならない」と思う。素人であるが故にそう思うことができます。危機感と飢餓感が豊かな創造性を育み、創意工夫を生み、研究開発を成功へと導いていったのです。


 創業者たちはもともと技術をもたない素人であったにもかかわらず、危機感と飢餓感から創意工夫を生み出したのです。自分は学がなく、決して頭が良いわけでもないということをよくわかっているからこそ、危機感がある。だから優秀な技術屋を探し求めたり、大学を訪ねて優れた技術を導入したり、外国から技術導入したりする。ここでもまた一生懸命に創意工夫をしていくのです。

 危機感と飢餓感を原動力にして創意工夫を重ねることによって、次々と新製品、新技術が生まれます。それを連綿と続けると、企業が拡大発展していきます。これが、中小企業から中堅企業へと成長する段階です。危機感と飢餓感を原動力にして創意工夫を重ね、単品生産では将来が不安だと考え、間断なく新製品、新技術の開発に努め、企業を拡大発展させていく。それが中堅企業になっていく過程なのです。

半導体の生産はたいへんお金がかかります。大企業しかできないと言われている半導体の生産を、中小零細企業ロームが手がけた。しかも、他社が狙わないニッチな分野を狙った事業を展開して、すばらしい伸びを示している。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160407#1460025474
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20160404#1459766633