金利はあなたが決めてください リスクプレミアムの考え方|あれか、これか ― 「本当の値打ち」を見抜くファイナンス理論入門|ダイヤモンド・オンライン
前回見たとおり、金利とはリスクへの見返りである。リスクが高い投資ほど、金利が高くなる。裏を返せば、金利が高い取引というのは、リスクが高いとも言える。
一般に、お金が返せなくなる事態、すなわち債務不履行(デフォルト)の可能性を信用リスクと呼ぶ。キャッシュを手放すことで生まれる何よりも典型的なデメリットは、この信用リスクである。
ここから言えるのは、金利は本来、お金を出す側=投資家が決めるものだということだ。
ある企業Pが償還期限10年の社債を額面100万円、利率3%で発行したとしよう。社債というのは、投資家から借金をするために企業が発行する債券のこと。この債券を購入した人は、「10年後に100万円の元本を受け取る権利」と「10年にわたって毎年3万円(=100万円×3%)の利息を受け取る権利」を手にすることができる。
ここで思い出してほしいのは、ファイナンスの世界での金利は、将来のキャッシュフローを現在価値に割り戻すための割引率でもあるということだ。
投資家たちが望む金利が6%だとすると、1年後に受け取る3万円には約2.8万円の現在価値しかないし、10年後に受け取る103万円(元本+利息)には57.5万円の現在価値しかない。要するに、この社債の正味現在価値は77.9万円ということになる。
その結果、P社の社債は、100万円ではなく、77.9万円で取引されるようになる。77.9万円で購入した債券が、毎年3万円の利息のキャッシュフローを生み、10年後には元本100万円が戻ってくるわけだから、この投資の期待利回りは、めでたく6%となるわけだ。
言い換えれば、いくらP社が自分で決めた定価100万円で社債を売り出しても、賢明な投資家たちが「それには77.9万円の価値しかない」と判断すれば、市場ではディスカウント(値引き)されて取引されてしまうのだ。
このときのリスクをダウンサイド・リスクと呼ぶ。投資家はこのリスクが大きければ大きいほど高い金利を要求する。一定のリスクに対して見返り(プレミアム)として求められる金利のことをリスクプレミアムという。
なぜこんな回りくどい言い方をするのかといえば、リスクプレミアムだけで金利が決まるわけではないからだ。金利は次の2つで決まる。
金利 = リスクフリーレート + リスクプレミアム
リスクフリーレートとは、文字どおり、リスクフリーな資産(無リスク資産)の金利のことだ。これは要するに、国債の金利のことである。たとえば、P社社債のリスクプレミアムが6%で、P社が存在している国の国債金利が1%のとき、投資家はこの社債に7%の金利を要求することになる。
【問題】
消費者金融Q社では、100人の顧客に対して、7人の割合で返済が滞ることがわかっている。
国債金利が0.5%のとき、何%で貸し出せばいいか?
100人中7人が返済しない(信用リスク7%)ということは、求めるべき見返りとしてのリスクプレミアムは7%だ。
ここにリスクフリーレートである0.5%を足すので、金利は7.5%……と言いたいところだが、これでは利益が出ないので商売にならない。
消費者金融がビジネスとして継続するためには、ここにさらにQ社の取り分を追加することになるので、実際の貸出金利は7.5%よりも高くなる。