4月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降に入手した情報は、労働市場の改善ペースが鈍る一方で(the pase of improvement in the labor market has slowed)、経済活動の拡大は加速しているように見える(growth in economic activity appears to have picked up)ことを示している。失業率は低下したが、雇用の拡大は弱まった(job gains have diminished)。家計支出の伸びは力強さを増した(household spending has strengthened)。今年初め以来、住宅部門は引き続き改善し、純輸出から来る足かせは減ったように見える(drag from net exports appears to have lessened)が、企業の設備投資は軟調だった(has been soft)。インフレ率は、それまでのエネルギー価格とエネルギー以外の輸入物価の下落を部分的に反映して、委員会の長期的な目標である2%を下回り続けた。将来のインフレを示す市場ベースの指標は低下(declined)し、大半の調査に基づいた長期的なインフレ期待の指標はここ数カ月、総じてあまり変わっていない。
委員会は法律上与えられた責務に従って、雇用最大化と物価安定の促進を目指す。委員会は現在、金融政策の運営姿勢の緩やかな調整(gradual adjustments in the stance of monetary policy)により、経済活動が緩やかなペースで拡大し、労働市場の指標は力強さを増すと予測している。エネルギー価格のそれまでの下落(earlier declines)を部分的な原因として、インフレ率は短期的に低いままで推移すると見込まれる(inflation is expected to remain low in the near term)が、エネルギーや輸入価格の過去の(past)下落による一時的な影響が消え、労働市場がさらに力強さを増せば、中期的に2%に向かって上昇すると予想される。委員会は、物価指標と世界の経済や金融の動向(inflation indicators and global economic and financial developments)を引き続き注意深く監視(closely monitor)する。
こうした状況を背景に、委員会はフェデラルファンド(FF)金利の目標誘導レンジを0.25─0.50%に維持することを決定した。金融政策の運営姿勢は引き続き緩和的で、それによって労働市場の状況の一段の改善と、2%のインフレへの回帰を支える。
FF金利の目標誘導レンジの将来的な調整の時期と規模を決めるに当たり、委員会は目標にしている最大雇用と2%のインフレとの比較で経済状況の実績と見通しを評価する。この評価は、労働市場の状況に関する指標、インフレ圧力やインフレ期待の指標、金融動向や国際情勢の解釈を含む幅広い情報を考慮する。現時点でインフレ率が2%に届いていないことを考慮し、委員会はインフレ目標達成に向けた進捗と期待を注視する。委員会は、経済状況はFF金利の緩やかな引き上げしか正当化しない形で進むと予測する。FF金利は当面、長期的に到達すると見込まれる水準を下回るレベルで推移する可能性がある。ただ、FF金利の実際の道筋は、今後入手するデータがもたらす経済見通し次第である。
委員会は、保有する政府機関債とエージェンシー発行モーゲージ債(MBS)の償還元本をMBSに再投資し、米国債の償還金を新発債に再投資する既存の政策を維持する。そして、FF金利の水準が十分に正常化されるまで、そうすると想定している。委員会による長期証券の保有を相当な水準で維持するこの政策は、金融環境を緩和的に保つ上で役立つはずだ。
政策決定の投票で賛成したのは、ジャネット・イエレン委員長、ウィリアム・ダドリー副委員長、ラエル・ブレイナード、ジェームズ・ブラード、スタンレー・フィッシャー、エスター・ジョージ、ロレッタ・メスター、ジェローム・パウエル、エリック・ローゼングレン、ダニエル・タルーロの各委員。
FRB: Press Release--Federal Reserve issues FOMC statement--June 15, 2016
Information received since the Federal Open Market Committee met in April indicates that the pace of improvement in the labor market has slowed while growth in economic activity appears to have picked up. Although the unemployment rate has declined, job gains have diminished. Growth in household spending has strengthened. Since the beginning of the year, the housing sector has continued to improve and the drag from net exports appears to have lessened, but business fixed investment has been soft. Inflation has continued to run below the Committee's 2 percent longer-run objective, partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports. Market-based measures of inflation compensation declined; most survey-based measures of longer-term inflation expectations are little changed, on balance, in recent months.
Consistent with its statutory mandate, the Committee seeks to foster maximum employment and price stability. The Committee currently expects that, with gradual adjustments in the stance of monetary policy, economic activity will expand at a moderate pace and labor market indicators will strengthen. Inflation is expected to remain low in the near term, in part because of earlier declines in energy prices, but to rise to 2 percent over the medium term as the transitory effects of past declines in energy and import prices dissipate and the labor market strengthens further. The Committee continues to closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments.
Against this backdrop, the Committee decided to maintain the target range for the federal funds rate at 1/4 to 1/2 percent. The stance of monetary policy remains accommodative, thereby supporting further improvement in labor market conditions and a return to 2 percent inflation.
In determining the timing and size of future adjustments to the target range for the federal funds rate, the Committee will assess realized and expected economic conditions relative to its objectives of maximum employment and 2 percent inflation. This assessment will take into account a wide range of information, including measures of labor market conditions, indicators of inflation pressures and inflation expectations, and readings on financial and international developments. In light of the current shortfall of inflation from 2 percent, the Committee will carefully monitor actual and expected progress toward its inflation goal. The Committee expects that economic conditions will evolve in a manner that will warrant only gradual increases in the federal funds rate; the federal funds rate is likely to remain, for some time, below levels that are expected to prevail in the longer run. However, the actual path of the federal funds rate will depend on the economic outlook as informed by incoming data.
The Committee is maintaining its existing policy of reinvesting principal payments from its holdings of agency debt and agency mortgage-backed securities in agency mortgage-backed securities and of rolling over maturing Treasury securities at auction, and it anticipates doing so until normalization of the level of the federal funds rate is well under way. This policy, by keeping the Committee's holdings of longer-term securities at sizable levels, should help maintain accommodative financial conditions.
Voting for the FOMC monetary policy action were: Janet L. Yellen, Chair; William C. Dudley, Vice Chairman; Lael Brainard; James Bullard; Stanley Fischer; Esther L. George; Loretta J. Mester; Jerome H. Powell; Eric Rosengren; and Daniel K. Tarullo.
Now available: video of today's #FOMC press conference: https://t.co/sGxFGaFMSx
— Federal Reserve (@federalreserve) 2016年6月15日
Now available: transcript of Chair #Yellen's opening statement from the #FOMC press conference (PDF): https://t.co/vgwDoDLsFC
— Federal Reserve (@federalreserve) 2016年6月15日
<成長は上向く>
これまでの第2・四半期指標は、成長がかなり持ち直していることを示唆している。この回復は、全般的な経済活動は今後数年、緩やかなペースで拡大するとの委員会の見通しを支える主な要因だ。
<中立金利>
中立金利、つまり経済が最大雇用の状態で推移するのに適切な金利水準は、現時点で低いと考える十分な理由がある。そしてわれわの大半は基本シナリオとして、中立金利がいずれ上昇すると想定することが妥当だと考えている。だが確信はない。不確実性の1つであり、双方向に見直しの可能性がある。だが最新のFRB経済見通しでは下方修正が主だった。
<賃金の伸び>
労働市場のスラック(緩み)が解消し、労働市場が最大雇用と整合する状況に近づいている兆候とみなすにはいく分より速いペースでの賃金増が必要だと考える。賃金の伸びが加速に向かっている初期の兆しがみられる。これは労働市場が全般的に健全な兆候だ。
<政策と今後の選挙>
われわれは政治を考慮に入れず、経済見通しの評価や適切な変更を行うことにかなり集中して取り組んでいる。
仮に向こう数カ月中に公表されるデータが、見通しに照らして、われわれが適切とみるペースで徐々に利上げを行うことを正当化する内容なら、(徐々に利上げを進めても)市場は驚かないだろう。FOMCは適切と考えれば、今後数カ月中にためらわず行動する。
<海外情勢など不透明>
今年や来年に何回利上げすべきかをFOMC全体で議論したことは一度もなく、それはFOMCが決めることではない。FOMCは毎回の会合で決定を行い、会合で何を検討しているか、何が決定の根拠となるかを説明するよう心がけている。先に申し上げたように、まず海外情勢の不透明性が大きい。英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)問題では、国民投票の結果が将来の政策を決定する上で考慮する要因となる。経済成長や労働市場の進展継続も検討材料だ。
<利上げに決まった道筋ない、7月「不可能ではない」>
(利上げを行なうにあたり)十分な勢いがあることを確認する必要がある。こうしたことがいつ確認できるのかは分からない。毎回の会合で行動を起こす可能性がある。行動を起こす可能性のない会合はない。 利上げを行う可能性のない会合はない。
経済指標をみる必要があり、時期について事前に特定することはできない。次回会合、次々回会合と特定するのは心地悪いが、可能性はある。不可能ではない。
例えば、われわれが完全に良好な軌道に乗っていることを示す指標が7月までに得られることは不可能ではない。
<見通し、毎回の会合で行動する可能性>
消費支出の減速については、ファンダメンタルズからかい離しているようにみえる。われわれは上向くと予想していたし、上向いたとの非常に力強い確証も得ていた。
ただ労働市場は今は減速したようにみえ、われわれは経済の基調的な勢いが衰えていないことを確認する必要がある。
このため、労働市場の一段の改善に十分なペースで雇用創出が継続することを確認するために労働関連指標を注意深く検証し、われわれの予想に沿って成長が上向いていることを確認するために消費関連の指標も注視する。
毎回の会合で行動を起こす可能性があり、どの会合でもフェデラルファンド(FF)金利を調整する決定を下す可能性があるが、決定を行うにあたり、以上に述べたことがが必要となってくる。
<他国の金融政策、米FRBの足かせとならず>
海外経済の状況、成長見通しや金融政策スタンスは、米見通しや適切な金融政策スタンスに影響を及ぼす要因だ。米国の金融政策姿勢に関係するのは確かだが、金融政策の足かせとなっているとまでは言わない。
<労働市場>
労働市場の状況はなお健全だが、一部勢いが失われた感じはある。減速の理由が何であったのか、正確に言うことは難しい。特に労働市場をめぐる他の指標がなお堅調である時に、1回の経済指標を深読みするべきではない。
FOMCも、自分自身も、労働市場の進展が頓挫したとは考えていないし、予想もしていない。
<労働市場の減速>
労働市場の改善ペースは直近で著しく減速した模様だ。4・5月の雇用増は平均で月当たり約8万人にすぎなかったと推計される。最近の労働市場データが失望を誘う内容となったが、1−2カ月分の指標に過剰反応しないことが重要だ。委員会は引き続き、労働市場が今後数年間さらに強まると予想している。労働市場を注視していく。
<慎重な政策>
慎重に対応し、金利目標を引き上げることで、経済成長の緩やかなペースへの回復や労働市場の一段の強まり、インフレの2%目標への推移継続を確認することが可能となる。短期金利はゼロ近傍にとどまっており、慎重さがなおさら適切となる。すなわち金融政策は、労働市場の弱まりやインフレ低下に対するよりも、予想外に強いインフレ圧力に対して一層効果的に対処できる。
<英国による欧州連合(EU)離脱>
英国によるEU離脱(ブレグジット)について討議した。この問題は、今日の決定に織り込まれた1つの要素であったと言うのが公平だろう。
これは英国、および欧州にとり非常に重要な決定となる。世界的な金融市場における経済・財政状況に影響が及ぶ可能性がある決定だ。離脱すれば米経済見通しにも影響が及び、政策の適切な道筋を決める1つの要素となる。英国によるEU離脱問題は明らかにわれわれが討議した不透明な要素の1つで、今日の決定に織り込まれている。
FRBは、15日までの2日間、金融政策を決める会合を開き、終了後、発表した声明でアメリカ経済は上向いているとしながらも、順調に拡大していた雇用が、先月大きく伸び悩み減速したと指摘しました。また世界経済の行方にも影響するEU=ヨーロッパ連合からの離脱の賛否を問うイギリスの国民投票が来週に控えていることも念頭に、海外や金融市場で不安定な動きが広がらないか、注視する姿勢を示しました。
このためFRBは、去年12月に9年半ぶりに引き上げた政策金利について、今回も、現状のまま据え置き、4回連続で、追加の利上げを見送ることを決めました。
一方、FRBはこれまで年内に2回程度利上げを行う見方を示してきました。今後について、今回公表した資料では、年内の利上げは1回だけにとどまるという意見が増えているものの、内部の中心的な見方はなお2回程度で変わっていないことを明らかにし、雇用の動きなどを確かめて利上げの時期を探っていく意向を示しました。
金融政策を決める会合を終えて会見したFRBのイエレン議長は、個人消費などは持ち直しが明確になっていると景気全体については前向きに評価しながらも「最近の雇用の減速はがっかりする内容だった」と指摘し、利上げを見送った理由を「強弱まちまちな経済指標が示される中、慎重に判断することが適切だ」と説明しました。
そのうえで、今後について、次回、7月の会合での利上げも「不可能ではない」と指摘し、緩やかに利上げを続けていく姿勢を改めて強調しましたが、具体的な時期などには触れませんでした。
またイギリスで来週行われる、EU=ヨーロッパ連合からの離脱の賛否を問う国民投票について、「結果は世界経済や金融市場に大きな影響を及ぼすことになるため、今回の利上げ見送りの理由になった」と述べて今回の決定を大きく左右する懸念材料だったことを明らかにし、注視していく考えを示しました。
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