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 40年前のHBSは、ケースを使ってすべての授業を行っていた。今では、ハイブリッド型に移行し、ケースとともに新たなフィールド・スタディが両立している。


 40年前のHBSは、知識を詰め込む教育に主眼を置いていた。今では、Knowing(知識)からDoing(実践)、そしてさらにBeing(自身を知ること)に軸を移しつつある。


 40年前のHBSは、投資銀行、コンサル、GEやIBMなどの大手企業に多くの卒業生を輩出していた。今では、75%の卒業生が小さなスタートアップやNPOに就職するか、自分で起業している。


 これらの変化を象徴する科目として、IXP(Immersion Experience Program:どっぷり浸かって経験して学ぶプログラム)というフィールド・スタディ型授業(今年からIFC:Immersive Field Courseに改名)がMBA(経営学修士)2年目の選択コースに誕生した。


 初めて日本で開講した2012年にこの授業を履修した2年生22人は、3・11の東日本大震災の10ヵ月後に日本にやってきた。真冬の2週間をどっぷり東北の現場に浸かって経験を積んだ。仮設住宅建設のために梅の木を20本抜いたり、瓦礫を除去したりしながら、「心・技・体」を鍛えることの重要性を学んだ。


 今年、HBSを卒業した37名の第5回ジャパンIXP受講生の多くは、スタートアップやNPOに就職するか、起業家として人生の船出をした。3・11後に産声をあげた東北のアントレプレナーと一緒に仕事をしたことが、自分のミッションを考え直すきっかけになったと彼らは言う。“Why do I exist?”自分は何のために生まれてきたのか。東北のアントレプレナーや、東京でお会いしたファーストリテイリング柳井正会長兼社長が揃って口にした答え「世のため、人のため」が心に残ったに違いない。この5年間でジャパンIXPを受講した150人のHBS生にとって、東北は“Life-changing experience(人生を変える体験)”になった。それは担当教官として自信をもって言える。

 いま本連載と、監修を務めた新刊『ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか』を出すにあたり、読者の皆さんにお伝えしたい思いは、2つに集約される。


 ひとつ目は、生まれ変わったHBSを知ってもらうことである。これまで“ハーバード”という名称がタイトルに載った本は何十冊と出版されているが、それらは辛辣な言い方をすると、すでに「賞味期限」が過ぎているものである。これまでの本はHBSが100周年を契機に行った深い反省に触れていない。世界金融危機震源地となったウォール街に多くの卒業生を輩出してきたHBSは、本当に世界をよい方向に変えるリーダーを育成できていたのか?という深い自省を得た。


 この反省をもとに導かれた結論がknowing(知識)からdoing(実践)、being(自身を知ること)への移行であり、ケース・メソッドとフィールド・メソッドの両立である。これらのInnovationがおきる前の時代をBI(Before Innovation)と呼び、その後の時代をAI(After Innovation)と呼ぶのであれば、ジャパンIXPはAIの申し子である。『ハーバードはなぜ日本の東北で学ぶのか』は始めてAIについてまとめた出版物といえる。


 2つ目は、生まれ変わろうとしている3・11の被災地、東北を知ってもらい、支援してもらうことである。生まれ変わろうとしているのは、ベンチャー/大手にかかわらず多くの企業、行政や数々のNPO一般社団法人に限らない。東北と書いたが、日本、さらに世界の未来を担う高校生も思いは同じである。