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 大英帝国に陰りが生じたのが19世紀の末。新興の工業国アメリカの台頭です。綿織物など軽工業中心だったイギリスは、重化学工業を発展させたアメリカ、そしてドイツに工業生産で追い抜かれました。その後も海外投資のリターンで金が流入し続け、ポンドの地位は揺るがないように見えましたが、決定的だったのは第一次世界大戦でした。


 戦場にならなかったアメリカは、軍需物資を大量生産してヨーロッパの交戦国に輸出して莫大な利益を上げ、財政難に陥った各国政府が発効する戦時国債を引き受けて、債権国になりました。戦争はもちろん悲惨ですが、自国が戦場にならなければ儲かるものなのです。


 戦後、イギリスを始めとする欧州諸国は、戦時国債の償還、すなわち返済を迫られました。支払いはもちろん金(Gold)です。ロンドンの金融街シティの金庫から引き出された金塊が、大西洋を超えてニューヨークのウォール街へと流れ込んだのです。

 過剰な資金は国内の設備投資や海外投資に使われました。敗戦国ドイツの経済復興にも莫大な資金が投資されます。ところが、欧州の経済復興とともに輸出が止まって在庫がだぶつき始め、企業収益は悪化していきました。余剰資金は株式や債券に流れ、実体経済とかけ離れた株高――バブル経済をもたらします。


 このバブルが弾けたのが、1929年10月の株価大暴落。世界経済のけん引役となっていたアメリカの金融危機は、世界恐慌の引き金になりました。


 物価は下落を続け、市場規模は縮小し、輸出は伸び悩みます。金本位制では、貿易代金は金(Gold)で支払うのが原則ですから、貿易赤字は金の流出と直結します。中央銀行の手持ちの金と同額の紙幣を発行するのですから、金が底を突けば、通貨発行もできなくなります。通貨発行ができなければ景気対策も打てません。


 最後の手段が、金本位制の停止です。金(Gold)と等価交換できる引換券であるはずの通貨ドルを、金と切り離してしまうのです。


 各国が金本位制を停止した結果、基軸通貨を失った世界貿易は縮小しましたが、イギリスは広大な植民地――ポンド圏内で貿易を維持し、外国製品には高関税をかけるブロック経済で国内産業を守りました。


 植民地が少ない日本、まったくないドイツの産業を守るには、それぞれ円ブロック、マルク・ブロックを建設して市場を確保する必要がありました。こうして日独の軍事行動から始まったのが第二次世界大戦です。

 今度も戦場はヨーロッパと東アジア・太平洋海域で、破壊を免れたアメリカの工業はフル稼働し、爆弾から石油に至るまで軍需物資を大量生産して交戦国に売り込みました。


 アメリカがなぜ超大国になれたのか?


 ヨーロッパともアジアとも隔絶した場所にあるという、地政学的優位を生かせたからです。


 戦争が終わったとき、世界の金(Gold)の70%をアメリカ一国が保有していました。有りあまる資金は、ヨーロッパとアジアの戦後復興に投資され、また緊急援助として戦災孤児の空腹を満たしました。また膨大な軍事費を支え、米軍が「世界の警察」として展開を続けるのを可能にしました。もはやアメリカのドルなしには生きられない国々は、軍事的にも経済的にもアメリカの軍門に下ったのです。

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