日本の景気 雇用に変調か “製造業の求人も減少” #nhk_news https://t.co/0Z6iENPPrP
— NHKニュース (@nhk_news) 2019年12月13日
日本の景気は雇用が順調に改善してきたことが支えになってきましたが、最近、その「雇用」に“変調”もみられます。
厚生労働省によりますと、雇用情勢はなお全体としては人手不足の状態にありますが、製造業の求人に以前のような力強さがなくなりつつあります。
製造業の新規の求人数は、ことし2月から前の年の水準を下回るようになっています。特に、夏以降は8月が15.9%、9月が11%、10月が15.6%、それぞれ少なくなりました。
このうち、自動車メーカーでは工場で働く期間従業員の募集を見合わせる動きが相次いでいます。
マツダは海外で自動車の販売が減っていることから、広島県の本社工場と山口県の防府工場で期間従業員の募集を先月から停止しています。ホンダも生産計画の見直しにあわせて、埼玉製作所の寄居工場で期間従業員の募集を停止しているほか、日産自動車も人員削減を進めています。
自動車メーカー以外でも、大規模な人員削減に踏み切る企業が出ています。
アルミ加工最大手の「UACJ」は、中国経済の減速の影響で業績が悪化し、2022年度までに2000人規模で人員を削減するほか、旧三井造船の三井E&Sホールディングスも1000人規模の人員削減と配置転換を行うと発表しました。
流通大手の「セブン&アイ・ホールディングス」も、傘下のデパートの店舗の閉鎖などによって、3年後までにおよそ3000人を削減するとしています。
また、早期退職を募る企業も増えています。民間の調査会社「東京商工リサーチ」のまとめでは、ことしに入って先月までに上場企業が募集した早期退職の数は1万人を超え、ここ5年間で最も多くなっています。
政府も先月の月例経済報告で「雇用情勢」の判断を5年ぶりに下方修正しました。
大手自動車メーカー向けの部品を製造している企業も、「雇用」が気になり始めています。
茨城県などにある工場でブレーキ関連の部品を生産している「大川精螺工業」では、これまで取り引きしている自動車メーカーからの増産の要請に応えるため、派遣社員を増やして生産を続けてきました。
しかし、大手メーカーの海外販売が減少し、ことし8月から先月にかけて部品の受注が去年の同じ時期よりおよそ10%減ったということです。受注の減少は少なくとも来年の2月ごろまで続く見通しです。
会社では人員削減はしていませんが、派遣会社に新たな求人を出すのを見合わせています。この先も自動車の販売が上向くかどうか見通せないため、当面、派遣社員を増やすのは難しいと考えています。
大川知樹取締役は「今はなるべく残業をしないように調整しているが、今以上に受注が落ち込むことになれば、休日を増やすなどさらなる対応が必要になる。非常に厳しい状況です」と話していました。
工場などに人材を派遣する側も対応を迫られています。
東京にある人材派遣会社「アウトソーシング」は、自動車や機械メーカーなどさまざまな業種に2万人以上を派遣している業界大手です。
しかし、会社によりますと、製造業ではことしの夏から期間従業員の新規の募集を見合わせるメーカーが増え始めているということです。会社がことし10月に「自動車・重機・バイク」の工場に派遣した人の数は、前の年より40%以上少なくなりました。
中本敦専務は「通常であれば夏ぐらいから生産も増え始め、労働者の需要も出てくるが、ことしは引き合いがなかった。待ってもらう場合も多い」と話していました。
この会社で工業製品のデザイン技術を学んでいる小野達也さん(24)は、ことし6月に勤めていた携帯電話の販売会社を退職し、当初は自動車工場でものづくりに携わりたいと考えていました。ただ、期間従業員の募集停止の動きをみているうちに、工場で長く働くことができるか不安を感じるようになり、技術を身につけておこうと工業製品のデザインや設計の技術を一から学ぶことにしました。
小野さんは「ソフトウエアでちょっと凝った形のものをつくりあげる技術はまだまだ勉強が足りないと思いますが、どの職場でも活躍できるよう頑張ります」と話していました。
会社も、この先、期間従業員の募集を見合わせる動きが相次いだとしても、人手を必要としている分野に即戦力となる人材を派遣できるよう研修の内容をこれまでよりも充実させることにしています。
中本専務は「変動に対応するというのが企業にとっては人材ビジネスの1つの使い方という形になる。やる気のある人たちを教育し、企業の求めるスキルに持っていくことで企業のニーズに応えたい」と話していました。
みずほ総合研究所の嶋中由理子エコノミストは「日本経済は今踊り場の状況だとみている。特に気になっているのが『雇用』の状況で、製造業の新規の求人は減少基調となり、世界経済が減速する中で製造業を中心に先行きに対する慎重さが増している。雇用環境が悪くなって消費が弱まると、内需が外需の減速を支えるこれまでの構図が崩れる可能性があり、注意が必要だ」と指摘しています。
また、先行きについては「これまで緩やかに回復してきた『雇用』が今後は横ばいになっていくとみている。景気全体の回復基調も弱いものにとどまるのではないか」と話しています。