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19年10月に首都圏を襲った台風19号川崎市武蔵小杉駅周辺にあるタワーマンションが水害に脆弱であることを露見させた。水害に限らず、実は築15年から20年を迎えるタワマンで目立ち始めたのが雨漏りの問題である。首都圏におけるタワマンの多くが、湾岸エリアに立地している。工場や倉庫の跡地といった広い敷地を活用したものが多いからだ。海沿いは潮風が強い。そして高層であるために強風を受け、常に微小な揺れが生じている。また日本は地震の多い国なので、建物はしばしば強い揺れにも襲われている。

タワマンに装備されているエレベーターは、超高速のもので、高性能であるぶん、更新工事をする場合、大変な金額となる。今後、これらの問題をすべて負っていくのは、分譲したデベロッパーではなく、一人ひとりの所有者だ。こうしたメンテナンスコストについてデベロッパーが販売時に丁寧に説明する姿をあまり見ることはない。残念ながらタワマン購入者の多くが自分の生涯にわたっての住処を手に入れたと考えたのかもしれないが、このタワマンという住処は高級外車を買ってしまったも同然で、その高額なメンテナンス費用を永遠に負担していくことを覚悟せねばならないのだ。

投資家の購入、所有が多いタワマンはこうしたマーケットリスクには敏感だ。そしてタワマンは普通のマンションと異なり、一棟の戸数が数百戸から1000戸を超えるものもある。つまり希少性は低いのだ。投資家たちが同じ行動をするということは、同じタワマンで一気に売り物件が増えることを意味する。一時にたくさんの売り物件が供給されれば、価格暴落時期などはとりわけ売りづらくなってしまうのは自明のことなのである。

タワマンを買った多くの投資家は当初、東京五輪による価格上昇を狙ったとされるが、賢い投資家はすでに売却し、大きな利益を得ている。五輪終了後に景気が悪くなり、あわてて売ろうにも思惑通りにいくとは限らない。

本来不動産が価値を有するのは土地であって豪華な建物ではない。東京のブランド住宅地の多くが実は河川流域や海岸沿いを避けて高台に発達していることは、まさに「台風や地震との闘い」を避けようとする人々の知恵だったのである。そうした意味で麻布や広尾、青山、六本木といったブランドエリアの不動産価値は今後とも保たれていくだろうが、本来高い価値のなかった土地に林立したタワマンの価値が上昇していくとは、少子高齢化が深刻になっていく日本においてはおよそ考えにくい。

むしろ、これらのマンションを買った区分所有者や住民はやがて年をとる。そして建物も老朽化していく。やがてコモディティ(汎用品)と化したタワマンにも空き住戸が目立つようになると、資産価値を保ち続けていくことはますます難しくなっていくだろう。

それではタワマンは将来どんな資産となっているだろうか。日本は高度成長期から平成初期にかけて住宅はどんどん郊外へと拡散した。大量に首都圏に流入する地方からの人々の受け皿として建設されてきたのが団地だった。首都圏の多摩、愛知県の高蔵寺大阪府の千里などがその役割を果たしてきた代表的なニュータウンだ。当時の企業エリートたちにとって、公団(現在のUR都市機構)などが開発した団地は「憧れの街」だったのである。

現代のニュータウンこそがタワマンだ。今のエリートたちは夫婦共働きが基本。夫婦ともに大企業に勤めるため郊外に住むことは難しく、通勤に便利な都心のタワマンを買い求める。子どもは保育所に預け、仕事が早く終わったほうが迎えに行く。こんなライフスタイルに応えるのがタワマンだ。

都心はマンション価格が高くなってしまうが、以前と決定的に異なるのは夫婦共働きであるがゆえに世帯年収が高いことだ。パワーカップルといわれる所以である。

だが、こうして無理を重ねて手にしたタワマンは実は災害に弱く、建物維持コストに膨大な負担を強いられ、いざ売却しようにも同様な住戸が多いだけに価値を保ちづらく、資産性が高くないということが露呈するとどうなるのだろうか。

昔のエリートがこぞって住んだニュータウン内の団地が築40年以上の歳月を経て誰からも見向きもされない存在になったのと同じような結末が見えてくるのではないだろうか。夫婦で膨大な借金をしてやっとの思いで手に入れたタワマンが将来、団地化するリスクに実は多くの人たちは気付いていない。

不動産の価値のほとんどは土地にある。タワマンは希少性があったころはともかく、これだけコモディティ化すると、かつての郊外の団地と同じく、やがて価値のない代物になっていく可能性が高いのだ。

かつて表参道にあった同潤会アパートと呼ばれた建物は、それそのものに価値があったわけではなく、表参道にあったからこそ現代になっても価値が保たれていた。ゆえに、ビンテージと呼ばれ、建て替えの際にも高額の評価をされたのである。この法則は将来、タワマンにも間違いなくあてはまることであろう。

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