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東京電力は、2011年に起きた福島第一原発事故のあと社外から招いた会長が経営の改革を進めてきましたが、前任の川村隆氏が退任した去年6月以降、空席が続いています。

こうした中、東京電力は28日、取締役会を開き、新たな会長に前の経済同友会代表幹事で、三菱ケミカルホールディングスの会長の小林氏が就任する人事を内定しました。

小林氏は山梨県出身の74歳。

2年前まで経済同友会の代表幹事として経済界をリードしたほか、政府の経済財政諮問会議の民間議員なども歴任し、現在は、福島第一原発事故の賠償支援や東京電力の事業計画の策定などを行う「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」の運営委員などを務めています。

東京電力としては、エネルギー政策に通じ財界の重鎮でもある小林氏を経営トップに招くことで、柏崎刈羽原発のテロ対策の不備など不祥事が相次ぐ組織の抜本的な改革を急ぐねらいです。

小林氏は取締役会の議長も兼任し、今の議長で三井物産の元会長の槍田松瑩氏は退任します。

この人事案はことし6月の株主総会を経て正式に決定される予定です。

小林喜光氏は、1974年に当時の三菱化成工業に入社し、研究開発部門のトップなどを経て2007年に三菱ケミカルホールディングスの社長に就任しました。

不採算事業からの撤退やグループ企業の統合などを通して収益力の向上に取り組み、2015年には会長に就任しています。

また、おととしまでの4年間、経済同友会の代表幹事として経済界をリードしたほか、政府の経済財政諮問会議の民間議員や産業競争力会議有識者議員、規制改革推進会議の議長なども務め、経済政策に関する提言を積極的に行ってきました。

さらに、豊富な経営経験から、大手電機メーカーの東芝社外取締役として経営再建にも携わりました。

東京電力との関係では、2015年3月までのおよそ2年間、社外取締役を務めたあと、会社の経営改革を議論する「東京電力改革・1F問題委員会」の委員になり、今は、東京電力の賠償の支援や事業計画の策定などを行う「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」の運営委員を務めています。

小林氏は、記者会見で「東京電力は、賠償、廃炉といった福島への責任を果たし、カーボンニュートラル社会の実現や電力のレジリエンスの強化といった、社会のためにエネルギー事業を先導する企業であるべきだ。一方、原子力事業に関して、福島県新潟県など、地元の皆さんだけでなく広く国民の皆様からの信頼を大きく失う事案が発生していることは、誠に遺憾だ」と述べました。

そのうえで「福島第一原発の処理水の海洋放出においては、政府の方針を踏まえて、透明性や客観性を最大限確保しつつ、地元の皆様の理解を得ながら取り組んでいきたい。今後の東京電力の経営戦略の方向づけ、経営陣の監督指導、支援に、ひとはだ脱ごうと考え、重責を担うことにした」と述べました。

東京電力は、10年前に発生した福島第一原子力発電所の事故の当事者として廃炉や賠償など多くの課題に直面しています。

国の試算では事故の賠償や廃炉、それに除染などに21兆5000億円の巨額の費用が必要だとされ、東京電力はおよそ16兆円を負担することになる見通しです。

このうち、廃炉と賠償の費用は東京電力が長期にわたって毎年5000億円程度の資金を確保するとしています。

また、除染などの費用は国が東京電力の株式を売却して4兆円の利益を出すことで賄う方針で、それに見合う株価を実現するため東京電力は、2027年度以降、4500億円規模の利益水準を目指すとしています。

東京電力は、収益力の強化のため新潟県柏崎刈羽原発の再稼働を目指していますが、テロ対策の不備などの不祥事が相次ぎ、原子力規制委員会から是正措置の行政処分が出ていて、その時期は見通せません。

さらに、小売りの自由化による競争の激化にさらされ、売り上げの低迷が続いています。

また、国が最長で40年かかるとしている福島第一原発廃炉に向けて、「燃料デブリ」を取り出すための技術開発や、トリチウムなどを含む処理水を海に放出することに対する地元や漁業者などの理解を得ることも欠かせません。

国の二酸化炭素排出量全体のおよそ4割を占める発電部門を代表する企業として脱炭素社会の実現への道筋もつけていかなければなりません。

実質的に国有化された中で、現場の士気を高めながらいかに組織の風土を改革して収益力を上げていくかが課題となります。