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無罪を言い渡されたのは、東京電力勝俣恒久元会長(79)、武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)の旧経営陣3人です。

3人は福島第一原発の事故をめぐって検察審査会の議決によって業務上過失致死傷の罪で強制的に起訴され、いずれも無罪を主張していました。
判決で、東京地方裁判所の永渕健一裁判長は3人全員に無罪を言い渡しました。

今回の裁判で、検察官役の指定弁護士は、有力な証拠として東京電力津波対策にあたっていた元幹部の供述調書を提出していました。勝俣元会長らが出席する会議で新たな津波対策を取る必要があることを報告したという内容でしたが、これについて判決は「会議で報告したのではなく、資料を配付しただけで了承されたと、本人が推測している可能性がぬぐえず、信用性に疑いがある。この会議で国の地震対策である長期評価を津波対策に取り込むことが了承されたという事実は認められない」と判断しました。

また、平成14年に国の地震調査研究推進本部が公表した巨大地震の予測=「長期評価」について、判決は「巨大な津波が太平洋側でどこでも起こりうるということを十分な根拠をもって示していたとは言いがたい」と指摘しました。

そして、「旧経営陣3人が巨大な津波の発生を予測できる可能性があったとは認められない」と指摘しました。

東京電力の旧経営陣3人は堅い表情で法廷に入り、弁護士の隣に並んで座りました。

裁判が始まると、旧経営陣3人は裁判長に促されて法廷の中央にある証言台の前に並んで立ちました。

冒頭で裁判長が「被告人らはいずれも無罪」と主文を読み上げると、3人は裁判長のほうをまっすぐに見据えて聞いていました。そして裁判長に向かって小さく頭を下げ、再び弁護士の隣に座りました。

主文が言い渡された際、傍聴席からは「うそ」などと声があがり、法廷内は一時、騒然としました。また検察官役の指定弁護士は額に手を当てて厳しい表情を浮かべていました。

福島第一原発が立地し、いまもすべての地域に避難指示が出されている双葉町の伊澤史朗町長は「訴訟に関するコメントは差し控えるが、東京電力には原発事故による全町避難がいまだに継続している町の現状をよく認識し、事故の原因者の責務として賠償や町民の生活再建、町の復興などの様々な課題に誠実に取り組むよう強く求める」というコメントを発表しました。

同じく福島第一原発が立地する大熊町で事故の発生当時から町長を務める渡辺利綱町長は「当時大津波を予測できたかどうかについては専門家の意見も分かれているので複雑な問題だと考えていた。判決は判決として受け止めるが、被災した人の中には割り切れない思いの人もいるのではないか」と話していました。

そのうえで、「事故から8年半がたったが今も多くの住民が避難生活を強いられている。大切なことは、悲惨な事故を2度と起こしてはいけないということで、原発に関係する人たちは肝に銘じてこれから対応してもらいたい」と話していました。

原発事故を受けて村長としてすべての住民の避難を指示した川内村の遠藤雄幸村長は「司法の判断なので直接的なコメントは難しいが、原発事故では避難の中で多くの人たちが命を落とし、いまも避難を余儀なくされている人が数多くいるのが現実だ。なんらかの対策でこの事故を防げなかったのか、引き続き真相の究明を行う必要があると思う」と指摘しました。

そのうえで遠藤村長は、国や東京電力に対し、「避難を続ける人がいることや原発事故に伴う避難指示が解除されていない自治体があることを忘れないでほしい。エネルギー政策を進めてきた国の責任において、住民の帰還の促進や復興に向けた財源の確保を継続するとともに、東京電力には、原発廃炉や賠償など、直面する課題に最後まで対応してほしい」と述べました。

福島第一原発の事故をめぐり東京電力の旧経営陣3人が強制的に起訴された裁判で東京地方裁判所は3人全員に無罪を言い渡しました。しかし、福島第一原発津波対策をめぐっては、政府、国会、民間の事故調査員会がいずれも問題があったと指摘し、東京電力自身も「津波の想定に甘さがあり、備えが不十分だった」と認めています。

その背景として、日本の原発では重大な事故は起こらないといういわゆる「安全神話」が電力業界に浸透していたことが、津波などへの対策の不備につながったと指摘されています。

福島の事故の後、東京電力は実質的に国有化され、会長や社長なども交代を重ねて経営陣が刷新されています。いまの事業計画では、原発廃炉や賠償などの費用に充てるため、合理化などによって年間5000億円の利益を積み上げることになっています。

その一環として、1基当たり年間最大で1100億円の利益改善効果があるという新潟県柏崎刈羽原発の再稼働を目指していますが、2017年、規制当局から合格を得たものの、地元の自治体からの同意は得られていません。

いまの経営陣も重い責任を負っていることに変わりはなく、かつての「安全神話」から本当に脱却できているのかが問われています。

また、今月の台風15号では送配電の設備が大きな被害を受けて千葉県では大規模な停電が長期化しています。

合理化の一方で、災害への対策が十分だったのか、後に検証される見通しで今後の課題となります。