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パリでは2024年の五輪開催を控えて、不法占拠した建物の撤去が進む。移民や亡命希望者、歴史的に差別されてきた欧州の少数民族ロマ族など社会的弱者が住んでいた家を追われ、路頭に迷ったり、不慣れな土地への移転を強いられたりしている。

オリンピック村を含め五輪関連の施設が数多く建設されているパリ郊外セーヌサンドニ県は、国内で最も貧しい地域の1つ。当局の2021年の報告書によると、不法占拠建物やスラムの数が国内最多だ。

行政文書や裁判所文書、不法占拠者や支援団体などへのインタビューに基づくロイターの試算によると、セーヌサンドニでは23年に少なくとも60の不法占拠建物が閉鎖された。

フランス内務省のセーヌサンドニ支部は、不法占拠者の強制退去は五輪とは無関係で、通常の法的手続きに従っていると説明した。ただ、23年7月に可決された新法により、不法占拠に多額の罰金と実刑判決が課されることになり、退去は加速している。

県の発表によると、23年の不法占拠建物の閉鎖件数は、昨年の80件弱から減っている。しかし、支援団体は県の発表件数は実際よりも確実に少ないと主張。県は2018ー23年の立ち退きに関するデータ公開を拒否した。

セーヌサンドニで緊急避難用住宅を運営する団体、インターロジメント93の運営責任者であるヴァレリー・プヴィラン氏は、政府が郊外の緊急宿泊施設を1000カ所、10%程度減らし、さらに不法占拠建物を閉鎖したことで、多くの社会的弱者が不安定な生活状況に追い込まれていると話した。

ロイターの試算によると、不法建物閉鎖の影響を受けた人は少なくとも3000人に上る。強制退去を受けた人々の一部はセーヌサンドニやパリ市内の他の地区の路上に散り、ある者は国内の遠隔地に送られたという。

ロイターが住所を特定できた不法建物の閉鎖32件のうち13件は、セーヌサンドニの五輪会場から2キロ圏内だった。

このうちの1つは、選手村建設地から目と鼻の先にある古いセメント工場で、主にスーダンとチャドからの移民約400人が暮らしていたが、4月に警察によって閉鎖された。

<ホームレス化>

強制退去による公営住宅や緊急宿泊施設の不足が深刻化し、ホームレス問題が悪化している、とプヴィラン氏は指摘する。

フィロシュ副市長(住宅担当)は、パリで路上生活者がこれほどまでに増えたのは初めてで、特に子どもが目立つと指摘。その上で「貧困のない大会を目指すのであれば、不法建物からの強制退去は良い計画とは言えず、愚かなことだ」と述べ、政府に元病院やオフィスなどの空きビルを借り上げ、ホームレスの宿泊施設とするよう求めた。

インターロジメント93は13日、緊急避難施設には空きがなく、54人の妊婦を含む665人が路上で生活していると発表した。

パリのイダルゴ市長は11月、五輪開催までにホームレスに対して避難施設を提供する「準備が整わない」と警告した。政府はコメント要請に応じなかった。

カメリア・トルデアさん(31)が夫、子ども3人とともに暮らす建物は選手村から2キロのイルサンドニにある。トルデアさんは強制退去を恐れ、数十人のロマが暮らす廃屋を素早く立ち去るためにスーツケースに持ち物を詰め込んだ。2年前に公営住宅の入居を申請したが、平均的な待ち期間は8年だ。

近くの「のみの市」で小物を売って生計を立てているトルデアさん。「私たちは行くところがない。子どもたちはここの学校に通っているし、私たちはこの地域になじんでいるのに」と、不安でいっぱいだ。

五輪のインフラ整備を担当する公共機関ソリデオは、選手村がいずれ3000近くの住戸に転換され、そのうちの17%が低所得者向けになると強調している。

だが、地元の支援団体らは、価格面ではなおこの地域の多くの住民が手を出せる水準になっていないと批判する。

4月にセメント工場から退去させられたスーダン出身の男性は、まずパリ郊外のホテルに連れて行かれた後、1週間で何の説明もないまま立ち去るよう命じられ、9月に取材した際にはそれからずっと野宿を強いられていると明かした。

この男性は「こんな風にわれわれを路上に捨てる権利などない。われわれはフランスで働いている。夏にやってくる五輪選手たちよりも生活の場を得る権利はある」と訴えた。

#フランス(焦点:パリで増える路上生活者、五輪前に不法占拠建物の撤去進む)

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