アングル:気候変動で深刻化する食料危機、対応迫られる英国 https://t.co/TlU0ydnIVp https://t.co/TlU0ydnIVp
— ロイター (@ReutersJapan) May 18, 2024
英国では冬季に豪雨が続き、数週間にわたって農地が浸水被害を受けたため、麦などの主要穀物が大きな打撃を受けた。気候変動に伴う異常気象に対して、長期的な食品安全保障の強化策を講じるよう、早急な対応を求める声が高まっている。
非営利団体エナジー・アンド・クライメート・インテリジェンス・ユニット(ECIU)は13日に発表した研究の中で、記録的洪水が耕作面積の減少や不作をもたらし、英国の食料自給力を10%近く低下させる恐れがあるとの推計を示した。
「気候変動に対する抵抗力を高めた農業・食料システムを構築できるよう取り組む必要性に迫られている」とECIUで土地・食料・農業部門の代表を務めるトム・ランカスター氏は言う。
同研究では、洪水の影響が小麦の生産で特に深刻だとわかった。小麦の自給率は2018─22年平均の92%から減少し、国内消費量の約3分の1を輸入に頼ることになるとの見通しを示している。
こうした影響を受ければ、パンやビスケット、ビールなどといった基本的な食品も価格上昇を避けられず、生活費の高騰に何年も苦しんできた消費者にさらなる苦痛をもたらしかねない。
英政府が今週公表した最新の食料安全保障指数によれば、果物は国内消費量のちょうど17%、野菜は55%を国内で生産している。英政府はこの発表で、食料安全保障の指標がおおむね安定しているとした一方、気候変動による長期的なリスクには警鐘を鳴らしている。
スナク英首相は14日、「ファーム・トゥ・フォーク(農場から食卓まで)」の会合で、野菜と果物の国内生産に注力し、輸入に頼る量を減らす計画を明らかにした。
<より打撃を受けやすい状態に>
世界の食糧安全保障は、加速する気候変動の影響に以前から脅かされていたが、22年に始まったロシアによるウクライナ侵攻などといった政治的・経済的要因もこうした懸念に拍車をかけた。
昨年12月にアラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催された国連の気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)では、英国を含む130カ国以上が自国の気候アクションプランに食料供給・農業について組み込むことで初めて合意した。
複数の農業団体や環境団体からは、不規則な気候に合わせて農業の体制を整えるためには、より早急な対策が必要だとする声も上がる。
「こうした『全か無か』の雨量、つまり豪雨か日照りかという天候こそ、まさに私たちの懸念材料だ。どちらにせよ耕作地の縮小につながるからだ」と、英レディング大学の水門地質学教授、ハンナ・クローク氏は述べた。
英政府の独立諮問機関である気候変動委員会(CCC)が昨年公表した年次報告書によれば、農業は主要経済セクターの中でも突出して気候変動に順応する戦略が欠けた分野だという。
「私たちは食料価格の変動に対応できず、より打撃を受けやすい状態のままになってしまう」とクローク氏はオンラインの会見で語った。
<食料安全保障とは>
食料安全保障は、単にある国の食料自給力で成り立つものでははない。国内の食品生産量は鍵となるが、国民が購入可能な価格帯で、なおかつ栄養価の高い食品に十分手が届く状態かどうか、ということも重要だ。
英国消費者の食料安全保障には、バナナやオリーブなど、国内で生産されていない常用食品の供給も含まれる、とECIUのランカスター氏は言う。
「食料安全保障や、気候変動による食料安全保障への影響に対応する確実な政策は、英国の国境をはるかに越えた視点に立つものになるだろう」
ランカスター氏は、気候変動による影響を受けやすい国々で農家の回復力を高める援助をすることも英国の直接の関心事だ、と付け加えた。
英国の消費者は既に、気候変動に伴う価格上昇を感じ始めていると同氏は言う。今年、カカオ生産地域である西アフリカでの異常気象を受けてイースターエッグのチョコレート価格が上がっていたこともその一例だと指摘した。
英国では24年後半に予定されている総選挙に先駆け、非政府組織(NGO)や食品会社、農業組合などが共同声明を発表。持続可能な農業に切り替える農家への助成や、自然保護に向けた取り組みなど、新たな戦略を実施するよう次期政府に要請した。
この声明に名を連ねた英国土壌協会のヘレン・ブラウニング代表理事は、農場での貯水池設置など、インフラ整備への投資が必要だと話す。
ブラウニング氏は、家畜に安全な場所を提供し、作物を守り、洪水発生後には土壌が乾くのを促すことができるとして、一つの土地に農作物と樹木を一緒に育てる森林農業を農家が導入すべきだと考えているという。
「他国からの輸入品に頼るわけにはいかない。そうした国々も英国と同様、気候変動の巨大な混乱に巻き込まれることになるからだ」
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