全国コアCPI、11月は+3.0%で伸び横ばい エネルギー上昇も食品が鈍化 https://t.co/TLA3mtvfef https://t.co/TLA3mtvfef
— ロイター (@ReutersJapan) December 19, 2025
総務省が19日に発表した11月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数、コアCPI)は、前年比3.0%上昇した。伸び率は前月から変わらず。エネルギー価格が上昇率を拡大する一方、生鮮食品を除く食料は伸びが鈍化した。ロイターが集計した民間調査機関の予測中央値に一致した。
エネルギー価格は前年比2.5%上昇で、前月の2.1%上昇から伸びが加速した。電気代が4.9%上昇と、前月の3.5%上昇を上回ったことが主因。政府の電気・ガス料金負担軽減策がいったん終了し、同措置に伴う押し下げがなくなった。一方、ガソリン代は0.9%下落と、前月の前年比変わらずから下落に転じた。ガソリン暫定税率の廃止に向け、政府の補助金が段階的に拡充されている影響が出た。
生鮮食品を除く食料は7.0%上昇(前月7.2%上昇)で、4カ月連続で伸び率が縮小した。
コメ類は37.1%上昇と、前月の40.2%上昇を下回った。新米の高値取引を背景にコメ類の価格は上昇はしているものの、前年の伸びの方が大きかったこともあり上昇幅は前月から縮小した。
コア対象522品目のうち、上昇が405、下落が81、変わらずが36。上昇品目は前月から5品目増えた。
総合指数は前年比2.9%上昇し、伸びは前月の3.0%から縮小。生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(コアコアCPI)は3.0%上昇で、伸びは前月の3.1%から鈍化した。
大和証券のチーフエコノミスト、末広徹氏は、生鮮食品を除く食料の上昇幅は小幅縮小したものの大きな変化はなく、2026年もコメ類の価格動向が重要になるとみている。今回の結果が日銀の金融政策に影響を与えることはないものの、「コメ価格の下落などを通じてインフレ率の下振れ傾向が強くなれば、日銀の利上げ余地は小さくなる公算だ」と述べた。
【速報 JUST IN 】11月の消費者物価指数 前年同月比3.0%上昇https://t.co/to26E4aAq3 #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) December 18, 2025
家庭で消費するモノやサービスの値動きをみる11月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が去年の同じ月より3.0%上昇しました。上昇率が3%台となるのは2か月連続で、食料品を中心に物価の上昇が続いています。
総務省によりますと、先月の消費者物価指数は天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が2020年の平均を100として112.5となり、去年の同じ月より3.0%上昇しました。
上昇率は前の月から変わらず横ばいで、2か月連続の3%台となりました。
このうち、「生鮮食品を除く食料」は去年の同じ月と比べて7.0%上昇し、上昇率は4か月連続で縮小しているものの、高い伸びが続いています。
主な品目をみますと
▽「米類」は37.1%の上昇と、ことしの新米の値上がりを受けて引き続き高い水準となっています。
このほか
▽「コーヒー豆」が51.6%
▽「チョコレート」が26.7%
▽「おにぎり」が13.8%
▽「鶏卵」が12.8%
▽「鶏肉」が9.8%、それぞれ上昇しました。また、政府による電気・ガス料金の支援策がいったん終了した影響で、
▽「電気代」は4.9%の上昇となり、物価を押し上げる要因の1つとなりました。
日銀、0.75%への利上げを決定 30年ぶり高水準 https://t.co/qcO65PbqxU https://t.co/qcO65PbqxU
— ロイター (@ReutersJapan) December 19, 2025
日銀は18、19日に開いた金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.75%に引き上げることを全員一致で決めた。利上げは1月以来。政策金利は1995年9月以来、30年ぶりの高水準となった。企業への聞き取りなどを踏まえ、賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持される可能性が高いと判断、経済・物価の中心的な見通しが実現する確度は高まっているとした。
日銀は現在の実質金利は「極めて低い水準にある」とし、経済・物価見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針を示した。
米国経済の下振れリスクが後退し、日銀が描く経済・物価見通しが実現する確度が高まる中、植田和男総裁が1日の名古屋での講演で、春闘に向けた「初動のモメンタム」などを確認した上で、利上げの是非を「適切に判断したい」と述べたことで、市場で12月会合での利上げ決定の可能性が急速に織り込まれていた。
来年の春季労使交渉(春闘)に向けた企業の賃上げ姿勢について、労使の対応方針や日銀の本支店を通じたヒアリング情報などを踏まえると「来年は、今年に続きしっかりとした賃上げが実施される可能性が高く、企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低い」とした。また、米国経済や各国の通商政策の影響を巡る不確実性は「引き続き残っているものの、低下している」とした。賃金上昇の販売価格への転嫁が続くもとで、消費者物価の基調的な上昇率は「緩やかな上昇が続いている」と指摘した。
日銀は政策金利の引き上げ後も「実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持されるため、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていく」と指摘した。
日銀は基調的な物価上昇率について、2027年度を最終年度とする「展望リポートの見通し期間後半」には2%の物価安定目標とおおむね整合的な水準で推移するとの見通しを改めて示した。
ただ、この記述には高田創審議委員、田村直樹審議委員が反対した。高田委員は、基調的な物価上昇率を含め、消費者物価は「すでにおおむね物価目標に達する水準にある」と主張。田村委員は、基調的な物価上昇率は見通し期間の「半ば以降」に物価目標とおおむね整合的な水準で推移すると主張した。
日銀はこのほか、リスク要因として、各国の通商政策の影響を受けた海外の経済・物価動向、企業の賃金・価格設定行動、金融・為替市場の動向を挙げ、これらの経済・物価への影響を十分注視する必要があるとした。
なお、声明文では中立金利の推計への言及はなかった。
金融緩和度合いの調整ペース、毎月の決定会合で適切に判断=日銀総裁 https://t.co/PUdxZY3HmJ https://t.co/PUdxZY3HmJ
— ロイター (@ReutersJapan) December 19, 2025
日銀の植田和男総裁は19日、金融政策決定会合後の会見で、現在の実質金利はきわめて低い水準にあるとの認識を示し、今後も利上げを継続していく方針を示した。経済に対して引き締め的でも緩和的でもない中立金利について、推計値の下限までには「少し距離がある」とする一方で、実際の中立金利がどこに位置するのかは利上げによる経済の反応を点検しながら「手探りで見ていかなければいけない」と語った。
植田総裁は、先行きの政策金利の道筋や金融緩和の度合いを調整するペースは「今後の経済、物価、金融情勢次第であり、毎回の決定会合で経済・物価の見通しやリスク、見通し実現の確度をアップデートしながら適切に判断していく」と語った。
中立金利の推計値については、相当なばらつきがあり、かなりの幅を持ってみる必要があると指摘。「今後とも短期金利の変化に対する経済、物価の反応を点検し、中立金利の水準を探りながら、金融緩和の度合いを調整していくことが適当だ」と述べた。昨年公表した日銀の論文に基づけば、中立金利は1―2.5%だが、最新のデータに基づく推計は明らかにしなかった。金融緩和度合いの評価には、短期金利と中立金利の関係だけでなく、実質金利の水準や貸し出しの動向などを含め、総合的に判断していく必要があるとも語った。
<政策金利、30年ぶり高水準に>
日銀は18、19日に開催した決定会合で、政策金利を0.75%程度に引き上げることを全員一致で決めた。利上げは1月以来。政策金利は1995年9月以来、30年ぶりの高水準となった もっと見る 。
植田総裁は利上げを決定した背景について、米国経済の下振れリスクは低下していると指摘。懸念された米関税措置の国内経済への影響も、全体に波及している様子はうかがわれないと説明した。
動向を見極めたいとしていた春季労使交渉(春闘)の「初動のモメンタム」についても、労使の対応方針や日銀の本支店を通じたヒアリング情報などを踏まえると、来年もしっかりした賃上げが実施される可能性が高く、「企業の積極的な賃金設定行動が途切れるリスクは低い」とみられるという。
総裁は「賃金と物価がともに緩やかに上昇していくメカニズムが維持される可能性が高い」との見方を示した。
債券市場では、日銀の利上げ発表後に金利が上昇。新発10年債利回り(長期金利)は2.020%と、1999年8月以来の高水準をつけた。外為市場は円安方向に反応。ドルは156円半ばまで上昇した。
円安傾向が利上げ判断にどの程度影響したかとの質問に植田総裁は、決定会合では複数の委員が、最近の円安が輸入物価や国内価格に影響を与えている、もしくはこれから影響を与える可能性がある、場合によっては基調物価に影響するかもしれないと指摘したことを明らかにした。また、足元での円安に関連して「円安が基調的物価に影響を与える可能性については、企業の価格設定行動が積極的になっているもとで注意してみていきたい」と語った。
【速報 JUST IN 】日銀 利上げ決定 ことし1月以来 政策金利0.75%程度に引き上げhttps://t.co/A8FVNXqrdM #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) December 19, 2025
日銀は、19日まで開いた金融政策決定会合で、来年も高い賃上げが見込まれ経済情勢の改善が続くとして、利上げに踏み切ることを決めました。政策金利は30年前の1995年以来の高い水準となる0.75%程度となり、日本経済は金利のある世界に一段と進むことになります。
目次
4項目
なぜ今、日銀は利上げするのか
慎重にタイミングを探ってきた日銀
0.75%で暮らしはどうなる?
それでも海外の主要国の水準を大きく下回る【詳細】日銀 植田総裁が会見 利上げ決定を受け
日銀は19日、2日目の金融政策決定会合を開き、利上げの実施を全員一致で決めました。
政策金利としている短期の市場金利をこれまでの0.5%程度から0.75%程度に引き上げます。
利上げはことし1月以来で、政策金利は1995年9月以来、30年ぶりの高い水準となります。
日銀は利上げの検討にあたって賃上げに向けた動きを重視していましたが、企業への聞き取りや春闘に向けた労働組合の要求の方針などを踏まえ、利上げをしても経済情勢に問題は生じないと判断したとみられます。
また、政府が物価高対策を進める中、最近の円安傾向が輸入物価を一段と押し上げることへの警戒感も利上げの判断の背景にあるとみられます。
さらに日銀は、利上げを決めた公表文の中で「政策金利の変更後も実質金利は大幅なマイナスが続き、緩和的な金融環境は維持される」とした上で、「経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている」として、今後も利上げを目指す方針を明記しました。
日銀はバブル経済の崩壊から平成の金融危機、そして長期化したデフレの中で低金利政策を続けてきましたが、物価の上昇や経済情勢の改善を受けて去年から段階的に利上げを進めてきました。
今回の利上げで政策金利は30年間超えることがなかった0.5%を上回ることになり、日本経済は金利のある世界に一段と進むことになります。
なぜ今、日銀は利上げするのか
政策金利は30年間、0.5%を超えることがなく、市場関係者の間では“壁”とも言われてきました。
今回、日銀はその“壁”を上回る水準に引き上げましたが、とりわけ重視してきたのが「賃上げ」の動きです。
連合がまとめている賃上げ率は、2000年代に入って1%台が長く続き、安倍元総理大臣による経済政策「アベノミクス」が進められたときは2%台でした。
変化が現れたのがおととしです。
人手不足やコロナ禍以降の物価高を背景に企業の間で賃金を引き上げる動きが広がり、この年の賃上げ率は3%台の半ばに上昇しました。
そして去年、ことしは賃上げの勢いが一段と強まって5%台に上昇し、バブル期のころとほぼ同じ水準となりました。
賃上げの「原資」とも言える企業の収益も高い水準が続いていて、日銀としては賃金を起点に「消費」や「生産」が活発になり、いわば“利上げができる環境”が整ったと判断した形です。
もうひとつは物価です。
生鮮食品を除いく消費者物価指数の伸び率は、日銀が目標としている2%の物価安定の水準を超える状態が長く続いていますが、日銀がとくに警戒しているのが「円安」です。
円安になれば輸入物価が大きく上昇して原材料や食料品の価格が押し上げられますが、ここ数年、値上げに踏み切る企業が増えていることから日銀は「以前よりも円安の影響が物価に反映されやすくなっている」と見ています。
外国為替市場では金利が高くなる通貨が買われる傾向があり、日銀が利上げをすれば円相場は円高の方向に進みやすくなるという見方があります。
最近の外国為替市場では1ドル=155円台から156円台と円安の傾向が続いていて、植田総裁も物価のさらなる上昇によって景気が腰折れすることがないよう「為替による物価への影響を注視する」という姿勢を示していました。
慎重にタイミングを探ってきた日銀
前回、日銀が利上げをしたのはことし1月ですが、その後は慎重にタイミングを探ってきました。
当初、市場関係者の間では「半年に1度のペースで利上げを進めるのではないか」という見方がありましたが、日銀は6会合連続で政策金利を据え置きました。
最大の要因はアメリカのトランプ政権が打ち出した関税措置です。
当初は20%を超える高い関税率が示され、日銀は「経済を下押しする」と慎重な見通しを示しました。
ことし7月に日米が合意し、関税率が当初示された水準よりも低くなったあとも、経済への影響がどこまで大きくなるのか見通せないなどとして、さまざまなデータを見極める姿勢を強調しました。
一方、ことし10月には高市総理大臣が就任。
日銀の利上げについてかつて慎重な発言をしていたこともあり、どのように政府と連携していくかも課題となりました。
高市総理大臣の就任からおよそ1か月後、植田総裁は高市総理大臣や片山財務大臣などと相次いで会談し、金融政策の説明や経済、物価情勢に関する認識の共有に向けて意思疎通を図りました。
そして今月1日、植田総裁は講演でアメリカの関税措置をめぐる不確実性は低下したとした上で、来年の春闘に向けた賃上げの動きを見極めて「利上げの是非を適切に判断したい」と述べ、本格的な利上げの検討に入りました。
0.75%までの道のり
日銀の政策金利は30年前の1995年以来の水準となりましたが、当時と今の経済情勢は大きく異なります。
1995年の日本経済はバブル崩壊後、一時的に持ち直しが見られた局面でした。
しかし、1月には阪神淡路大震災が発生したほか、4月には円相場が1ドル=79円75銭と歴史的な円高に見舞われ、輸出企業が大きな打撃を受けました。
日銀は景気が悪化に転じるのを食い止めようと、当時の政策金利にあたる公定歩合を4月には1.75%から1%に、9月には1%から0.5%にそれぞれ引き下げ、経済の下支えに乗り出しました。
その後、公定歩合は0.5%に長く据え置かれましたが、1997年には「三洋証券」「北海道拓殖銀行」が経営破綻したのに続いて、当時の4大証券の一角、「山一証券」が自主廃業に追い込まれました。
翌年の1998年には長銀=日本長期信用銀行も経営破綻し、未曽有の金融危機で日本経済は長期低迷に陥ります。
この年、日銀は政策金利を0.25%に下げ、よく年の1999年2月には、当時先進国では例がなかった「ゼロ金利政策」に踏み切ります。
さらに2001年3月には金融政策の操作目標を金利ではなく、金融機関が日銀に持っている当座預金残高にする「量的緩和政策」に踏み切り、市場に大量の資金を供給してデフレ圧力を食い止めようとしました。
その後、景気の回復に伴って一時的に利上げをしたものの、リーマンショックによる世界的な金融危機を機に再び利下げを余儀なくされます。
日本経済がデフレに苦しむ中、2010年10月以降は事実上のゼロ金利政策に、そして2013年に就任した黒田前総裁のもとでは大規模な金融緩和策が導入され、その後、10年にわたって金利のない世界が続きました。
局面が変わったのは去年です。
コロナ禍のあとに生じた世界的な物価上昇によって国内でも商品やサービスを値上げする動きが広がりました。
さらに、深刻な人手不足も相まって企業の間で賃金を上げて人材を確保しようという動きも相次ぎ、春闘では連合のまとめで全国平均の賃上げ率が5%を超えるようになりました。
こうした中、植田総裁は去年3月の金融政策決定会合で17年ぶりの利上げに踏み切り、いわゆる「金利のある世界」が復活しました。
その後も日銀は去年7月、ことし1月と利上げに踏み切り、4回目の利上げで政策金利の水準は30年間、超えることがなかった0.5%を上回る形となりました。
一方、今の物価を見ると、コメを中心とした食料品の物価上昇は消費への影響が懸念されているほか、首都圏などの都市部の不動産価格の上昇に過熱感を指摘する見方もあります。
危機対応やデフレからの脱却に向けてで世界でも例のない金融政策を続けてきた日銀ですが、いまは経済と物価の安定に向けて“早すぎず、遅すぎない”タイミングでどのように政策金利を調整していくかが課題となっています。
0.75%で暮らしはどうなる?
今回の追加利上げによって政策金利は30年前の1995年当時の高い水準となり、暮らしにもさまざまな影響が出そうです。
まず、プラス面の影響としては金融機関に預けている預金の金利が増えることです。
日銀がことし1月に追加利上げを決定したあと、金融機関が普通預金や定期預金の金利を相次いで引き上げました。
このうちメガバンクの普通預金の金利は現在年0.2%となっています。
また、中には優遇金利が0.5%を超える銀行もあり、かつて大規模金融緩和が続いていたころの0.001%からは大幅に上昇しています。
今回の利上げで定期預金も含めて預金の金利を引き上げる動きが広がる可能性があります。
一方、資金を借りている人にとっては、金利が上昇することで利払いの負担が増えます。
例えば住宅ローンのうち利用者の8割以上が選択している変動型は短期の市場金利の影響を受けやすく、ことし1月の追加利上げの際には金融機関が4月1日から相次いで引き上げました。
住宅ローンの場合、金利が上昇しても返済額がただちに増えないルールを取り入れている金融機関がほとんどですが、今回の追加利上げを受けて金利引き上げの動きが広がりそうです。
専門家の試算は
みずほリサーチ&テクノロジーズの服部直樹チーフ日本経済エコノミストの試算によりますと、今回の利上げで家計全体への影響は、定期預金や国債の利子収入が増えるプラスとローンの利払いが増えるマイナスを差し引いて、1世帯あたり平均で年間1万5000円のプラスの効果があるとしています。ただ、世代別にみると、住宅ローンの利用が多い20代以下の世帯では利払いが増えてマイナス1万5000円、30代の世帯ではマイナス2万7000円とマイナスになる一方、60代の世帯では保有する預貯金など金融資産の利息が増えることで3万3000円のプラスとなるなど、世代によって影響が異なると見ています。
企業も設備投資や資金繰りのために金融機関から資金を借り入れますが、新たな借り入れの金利はこれまでより引き上げられる可能性があります。
服部さんの試算では借入金の利払い負担が大きくなることで、企業の経常利益は金融や保険業を除く全産業の平均で0.9%押し下げられ、規模が小さい企業や宿泊・飲食や医療福祉の関連の企業では押し下げの幅が大きくなると試算しています。
また、金融機関への経営にも影響が及ぶ可能性があります。
金融機関は預かった預金を貸し出しや株式や債券などの運用に充てていますが、地方銀行や信用金庫の中にはデフレのもとで貸し出しを伸ばせず、国債などの運用を増やしたところもあります。
日銀の利上げをきっかけに長期金利が上昇して国債の価格が下がった場合、多くの資金を運用に充てていた金融機関では多額の含み損を抱えるおそれもあります。
一方、外国為替市場では利上げによって金利が上がる円が買われ、円高が進むのではないかという見方もあります。
円高が進んだ場合、輸入するエネルギーや原材料の調達コストの軽減につながる可能性があります。
ただ、急速に円高が進むと輸出企業にとっては業績悪化につながる場合もあり、利上げを受けた外国為替市場の動きも暮らしに影響しそうです。
日銀 どこまで利上げ進める? 目安は「中立金利」
今回の利上げで政策金利は0.75%程度となりましたが、日銀がこの先、どこまで利上げを進めるのかも焦点です。
目安とされているのが「中立金利」という考え方です。
「中立金利」は景気を熱することもなく冷ますこともない水準だとされています。
そして日銀は、目標としている「2%の物価安定」では、政策金利が中立金利の水準になっているという考え方を示しています。
一方、日銀は、利上げをしても政策金利は中立金利よりも低い水準にあって、景気を熱して押し上げる方向に作用する緩和的な水準だという認識を示しています。
このため市場関係者の間では「この先も日銀は中立金利の水準まで利上げを進めるだろう」という見方が多くなっています。
ただ、日銀はこの中立金利について、特定の水準を示していません。
中立金利は景気や物価に影響を与えない「自然利子率」と「予想物価上昇率」を足して計算しますが、「自然利子率の推計にはさまざまな方法がある」というのが理由で、これまでは『1%から2.5%の間』と幅を持って示していました。
また、日銀内には「経済や物価の情勢は常に変化していて、中立金利の水準をピンポイントで特定するのはほぼ不可能だ」とか「特定の水準を示すとそれに縛られて、政策の自由度を損なうことになる」といった意見もあります。
日銀の政策金利は家計や企業、それに為替など幅広い分野に影響が及ぶだけに、今後も金融市場では「どこまで金利が上がるのか」を探る上で、中立金利の水準に関する日銀の考え方に注目が集まりそうです。
それでも海外の主要国の水準を大きく下回る
今回、利上げに踏み切った日銀ですが、海外の主要な中央銀行は逆に利下げを進めている局面で日本と海外で金融政策の方向性の違いが際だっています。
このうちアメリカのFRB=連邦準備制度理事会は雇用の下振れのリスクが高まったことを踏まえ、今月まで3会合連続で利下げに踏み切っています。
また、ECB=ヨーロッパ中央銀行は、今月の会合まで4会合連続で政策金利を据え置いていますが、その前までは7会合連続で利下げをし、イギリスの中央銀行のイングランド銀行もことしに入って4回の利下げを行っています。
欧米ではコロナ禍以降、急激なインフレが進み中央銀行が利上げで物価高を抑え込もうとしましたが、その後は景気の下支えにかじを切っている形です。
それでも政策金利は
▽アメリカが3.5%から3.75%
▽ヨーロッパ中央銀行が2%
▽イングランド銀行が3.75%
▽カナダ銀行が2.25%で日本の政策金利は利上げをしても主要国の水準を大きく下回っています。【Q&A】今回の利上げの意味は
Q.今回の利上げはどういう意味をもつ?
A.利上げといいますと「金融を引き締める」、あるいは「景気の過熱を抑える」という印象がありますが、日銀の意図はそうではありません。
これまで政策金利を低くして景気を後押ししていましたが、関税の影響があっても企業収益は好調で、賃上げの動きが広がり、経済の情勢は底堅くなっています。
一方、最近は円安傾向にあります。
このため輸入物価が押し上げられるという警戒感もありました。
そこで、少しアクセルの踏み方を緩めていく必要があるとして、利上げに踏み切りました。
日銀としては「ブレーキを踏んでいるわけではない」という認識で、今後も経済活動をサポートすると強調しています。Q.暮らしへの影響は?
A.日銀の利上げをうけて、さきほど債券市場で長期金利が大きな節目となる2%台となりました。
このため、暮らしの中でも「金利のある世界」を一段と意識する機会が増えそうです。
まずプラスの面で言えば、利上げを受けて金融機関が普通預金などの利息を引き上げる可能性があります。
一方、マイナスの面では、多く利用されている変動型の住宅ローンでは、短期の市場金利の影響を受けやすいので、金利が引き上げられる可能性があります。
民間の調査会社は世代によって影響は異なると見ています。
住宅ローンの利用が多い20代から40代は負担感のほうが強くでる一方、ローンの支払いが終わって貯蓄などが比較的あるとみられる50代より上の世代は、プラスの影響が出やすいということです。
企業にとっても新たな借り入れでは、金利は引き上げられる可能性があります。
金利のある世界で景気は腰折れしないか、これまで以上にきめ細かい目配りが必要になります。
日銀 利上げ決定 ことし1月以来 政策金利0.75%程度に引き上げ
— NHKニュース (@nhk_news) December 19, 2025
▼最新情報はこちらの記事で▼https://t.co/A8FVNXqrdM#nhk_video pic.twitter.com/or8boCmSVp
【速報 JUST IN 】債券市場で長期金利2%台に上昇 日銀の利上げ受け 19年半ぶりhttps://t.co/ZyQtMz7E9U #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) December 19, 2025
【速報 JUST IN 】債券市場で長期金利2%超に上昇 日銀の利上げ受け 約26年ぶりhttps://t.co/ZyQtMz7E9U #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) December 19, 2025
日銀 植田総裁が会見 利上げ決定を受け
— NHKニュース (@nhk_news) December 19, 2025
決定の背景や 今後の利上げ姿勢についてどのような考えを示すのか
会見での植田総裁の発言をこちらのタイムラインで速報していますhttps://t.co/Jec2bn7171#nhk_video pic.twitter.com/OsU3dK2MKD
景気判断16カ月連続維持、「緩やかに回復」=12月月例報告 https://t.co/QJ3HzaY49f https://t.co/QJ3HzaY49f
— ロイター (@ReutersJapan) December 19, 2025
〔表〕月例経済報告の景気判断の推移 https://t.co/Q2GkJT14ig https://t.co/Q2GkJT14ig
— ロイター (@ReutersJapan) December 19, 2025
12月の月例経済報告「緩やかに回復」基調判断 4か月連続で維持https://t.co/1JMFpiUpnB #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) December 19, 2025
政府は12月の月例経済報告で、景気の現状について「アメリカの通商政策による影響が自動車産業を中心にみられるものの、緩やかに回復している」として基調判断を4か月連続で維持しました。
個別の項目では
▽「公共投資」は、公共工事の発注が一服しているとして、「堅調に推移している」から「底堅く推移している」に13か月ぶりに下方修正しました。また、「輸出」は、ことし9月に関税率が引き下げられたアメリカ向けの自動車で
▽輸出台数は関税措置の前の水準に戻っている一方、
▽輸出価格は依然として低い水準にあることから、「おおむね横ばいとなっている」と、6か月連続で同じ判断としています。
#日本経済(251219)