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【詳説・戦後】第9回道路特定財源 議員立法で成立、角栄の執念

 「戦後の政治家は行政に精通し、予算書が読めて、法律案文を修正することが政治だという錯覚に陥っている者が多い。けしからん。自らの手で立法することにより、政治や政策の方向性を示すことこそ、政治家本来の姿だ。政策を作れんヤツは政治家を辞めた方がいい」

当時、建設官僚だった川島博はこう証言している。「議員立法であれば内閣法制局の厳重な審査ではなく、衆院法制局の簡単な審査ですむ。何よりもGHQ(連合国軍総司令部)がノーマークでフリーパスにしてくれる。そこで田中氏に(立法を)頼んだんです」

 当時、田中は「これで電力拡大のメドはついた。次に敗戦で崩壊した日本経済復興の牽引(けんいん)車は何か。交通網の整備である。わが国の国民総生産は鉄道の建設テンポに大体比例して拡大してきた。私はその鉄道に次ぐ第二の交通網は道路だと思った」と語っている。

「米国ではどのようにして広い国土を覆う道路網の整備財源を出しているんだ。調べてくれ」と依頼した。井上は田中に「米国ではガソリンの税金を道路整備財源に充てています」と報告。田中は「そうか、それはいい考えだ」とひざをたたいた。

 当初、法案には「政府は当該年度の揮発油税収入を、道路整備の財源等に計上しなければならない」と記されていたが、田中は「揮発油税収入を」の部分を「揮発油税収入相当額以上を」に修正した。

 49年3月22日、衆院大蔵委員会。委員長の安倍晋太郎の声が響き渡った。揮発油税などに2年間の暫定税率を加える租税特別措置法改正案が可決された瞬間だった。採決に先立ち、賛成討論をしたのは当選1回の小泉純一郎だった。

小泉は「揮発油税引き上げは、現今の石油情勢の下において資源の節約と消費の抑制を図るとともに、道路財源を充実するものとして当を得た措置だ」と訴えた。

 暫定税率で膨らんだ道路特定財源は全国の道路整備に投入され、地域の発展に貢献したが、道路族議員建設業界、官僚が一体となった「既得権益」と化した負の側面もある。

政官業癒着の典型が道路特定財源でもあった。