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伊藤 元重 ネットで「ニュースサーフィン」

 紙の新聞を読まなくなったわけではない。私の学部長室には、読売・日経・朝日・産経などが届けられ、それらを机の上に広げて読むのは楽しい時間だ。
 しかし、毎日そうした時間をとることは不可能だ。学部長室に居ればいろいろな仕事がひっきりなしにやってくるし、そうしたいろいろな用件から逃れてゆっくりと読んだり書いたりしたければ、研究室、自宅の書斎、あるいは街の喫茶店など、どこかに隠れなくてはいけない。
 そこには紙の媒体の新聞がないことがほとんどだ。仮にあったとしても、本を読んだり原稿を書いたりするために避難しているのだから、その場所で新聞を広げることはない。

ネット情報の第二の利点は、特定の情報ソースに縛られないということだ。紙の媒体を利用しようとすれば、読売新聞でも日経新聞でも朝日新聞でも、新聞を丸ごと購入しなくてはならない。たとえば読売新聞を購入すれば、読売新聞の手の内の中で内外の情報にアクセスすることになるのだ。それに対してネットで情報アクセスすれば、読売新聞だけでなく、内外のあらゆる情報ソース――それも新聞だけでなく、シンクタンクが発信する情報、政府公報など様々なもの――にアクセスできるのだ。

 かつては技術的制約が大きかったので、ニュースサーフィンはできなかった。だから3紙も4紙も購読する人がいた。大きな会社や組織では、重要な記事を切り抜きして、それを回覧しているところもあった。しかし、今やそのような必要性が薄れてきた。