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木語:尖閣に中南海の高波=金子秀敏

10月に中国共産党の5中全会(中央委員会第5回総会)が開かれる。

 先週の本欄で強調したように、今回の反日デモの発端は尖閣諸島の漁船衝突事件の4日前の9月3日(中国の「抗日戦争勝利記念日」)に起きた中国外務省門前ゲリラデモである。横断幕に書いてあった文字は「東海談判 売国共識 喪権辱国」だった。意味は「東シナ海ガス田の交渉は売国合意だ。国辱だ」である。


 中国政府が日本政府と結んだ東シナ海ガス田共同開発合意を売国行為だと批判している。中国政府の最高責任者は温家宝首相。中国外交の責任者は共産党外事工作指導小組の組長である胡錦濤主席だ。中南海の反胡、反温勢力は、東シナ海の日中共同開発問題に集中砲火を浴びせているのだろう。

 SMAPの上海公演中止が話題になっているが、気になるのは「日本青年上海万博訪問団」1000人の訪中延期である。訪中団を招待したのは温家宝首相、受け入れは共青団系の団体だ。


 23年前、保守派に包囲され、改革派の胡耀邦総書記が失脚した。攻撃材料の一つにあったのが日本青年3000人訪中招待だ。胡氏は日本に媚(こ)びる親日派だと断罪された。


 共青団胡耀邦派の中核であり、胡主席の出身母体でもある。今回の延期通告は、温首相や共青団に逆風が吹いている証拠だ。

 外務省前デモ、尖閣諸島の衝突に続いて9月18日(柳条湖事件記念日)には、衝突漁船の船長逮捕に抗議する全国統一行動があった。5年前の反日デモと比べれば不発に終わったといっていい。だがデモのあった場所は5年前とほぼ同じ。既視感のある権力闘争の光景だ。