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「法と政治を学ぶ」とは

法学・政治学を学ぶ意義


 法学部に学ぶ者がそこで身につけるべき最も大切なものは、大局的見地に立って総合的に物事を判断する能力です。法学部に入った者は、種々の科目を学ぶことになります。しかし、これらを身につけた法学部卒業者に求められるものは、結局のところ、現実に生ずる具体的案件について、的確妥当な価値判断や意思決定を行う力である、と言えます。このことは、裁判官などの専門的法律家に対しても、また、その他の職業につく者に対しても、同じようにあてはまることなのです。


 現代社会がますます複雑化し、価値の多元化が一層進行するにつれて、法学部の果たすべき役割はますます重要になり、卒業生に対する期待と需要も一段と大きくなってきています。


社会問題を解く


 法律の勉強というと、法律を丸暗記して杓子定規の固い頭になるように訓練する、といったイメージがあるかもしれません。これほど実際から遠いことはありません。法律学を学び、legal mindを身につけるためには、日頃から社会問題に関心を持ち、問題の背景にあるさまざまな利害や、問われている道義的価値を正確に捉え、関連する問題を見抜き、自信を持てる公共的価値観のもとに多様な解決手法・選択肢を考察し比較検討できることが必要です。こうして初めて、具体的な社会問題を法律問題として捉え、活き活きと分析することができるようになります。財産や身分上の紛争、そして国家と市民との関係をめぐる問題に加え、私たちが直面している環境問題、家族や地域の問題や多様化する犯罪、そして政治や経済、あるいは宗教上民族上の対立を大きな要因とするテロル、これらが複雑に絡み合う内紛や戦争などに、法学は有効な分析視角を与えます。法律学は決して暗記物などではありません。


 法学は政治学とともに、歴史的、社会科学的、そして規範や文明を問う哲学的観点からの分析と相まって、これらの社会問題を解くのに大きな力になります。問題を、国民国家という組織によって秩序づけられた内外の公共空間の管理問題として捉え、その枠組で、あるいはその枠組みを改良しつつ、正義にかなった答えを出す手法として法や政治を捉えることが大切なのです。なお、法を政治現象としてみること、また一方で、近代国家においてはどうして法による統治が必要なのかという観点から政治という現象を考えてみること・・こういった仕方で法と政治の関連を適切に捉えることは、法律学を志す人に、また、政治学を勉強したい人にとって上達の早道です。