荒川コーチの薦めもあり、一緒に新宿区牛込町の道場へ通った。藤平さんの師、植芝師がこう言った。「待っていればタマは来るんだろう? なら、待っていればいいじゃないか」
この言葉に王はハッと気がついた。大スターになったあとも「ぼくはどんなタマを打とうとか、どう打とうかなどとは考えない。ただ来たタマを叩き壊すつもりで打ち返すだけ」が口ぐせだったが、実は植芝師のひと言が王の座右の銘になっていたのである。
700号目前に、王の心が乱れたことがあった。そのとき。藤平さんが王に言った。「なんで700号にこだわっているんだ。君の目標は700号じゃあないはずだろ。“あと1本”じゃなく、“あと101本”。700号は目標ではなく、通過点じゃないのか」
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「的を狙ってはいけない。心を深く凝らせば、的と自分が一体となる。自分自身を射なさい」
ヘリゲル氏は驚愕したに違いない。以来、疑うことも問うことも思い煩うこともきっぱりと諦め、精進した。こうして、苦節5年間の後、「無の射」を体得した。その完成の域が「不射の射」であることも理解したという。
図書カード:名人伝
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