https://d1021.hatenadiary.com
http://d1021.hatenablog.com

どんな番組であれ伝えることに変わりはない

――多くの日本の食卓で見られているNHKを代表する番組だと思います。プレッシャーのようなものはないのでしょうか?


阿部「緊張感や責任感、プレッシャーそのものは何の仕事でも持ち続けています。ただ、多くの方々が見ているから“格好をつけよう”というようなことは意識せず、「自分がいったい何をやるべきなのか」「やるべきことは何なのか」という本質的なことに気持ちを集中させています。もちろん地震や台風といった緊急報道も担当します。臨時のニュースなどが入った際にも、「その場で何をやらなければいけないのか」「何を重点的に伝えなければならないのか」と、しっかり対応することを意識すれば、おのずと責任感や緊張感が生まれてきます。画面ではなかなか伝わらないだけで、実は、汗もすごくかいているんですよ(笑)。」


――素朴な質問で恐縮ですが、ニュースの内容というのは、毎日毎日劇的に変化するものでもないと思います。緊張感を持ちつつ、新鮮な気持ちを保ち続けるというのは難しくないのでしょうか?


阿部「昨日とあまり変化のないニュースをお伝えしていても、情報はどんどん新しくなっていきます。例えば、天気予報一つとっても毎日違います。二度と同じ仕事はないんですよね。そういう意味でも、毎日緊張感を持って臨んでいます。しかし、おっしゃるとおり、原稿を受け取った際に、「あれ?これはどこが新しい部分になるのかな?今までとどこが違うのかな?」と思うときもあります。これではどこがニュースなのか分からないまま本番になってしまう。自分のなかでそしゃくできない部分があれば、その原稿を作った記者に確認する。「ここが違うところなんだな」と分かれば、その強調するべきところを強調して伝えることが出来る。毎日伝える役割を担っているからこそ、細心の注意を心がけています。」


――自身を一視聴者に身を置くからこそ、ニュースの鮮度や中身が見えてくるのですね。


阿部「“一視聴者の立場になってニュースに接する”、そこが入り口ですよね。自分で原稿を書き換えることはできないので、「こういう言い方は出来ますか?」と提案して言い回しを替えるということは日常茶飯事です。どうすれば分かりやすくなるか…毎日が、我々アナウンサーと現場の制作者によるせめぎ合いの作業の繰り返しです。」

――それまで担当してきた仕事の分野とはまったく異なると思います。実際に司会を担当されてみていかがでしたか?


阿部「『アジアライブ』の経験があるからこそ、『BS日本のうた』『NHK歌謡コンサート』とつながっていくわけで、自分のアナウンサー人生でも転機といえる番組だったと思います。なにより、アナウンサーの役割として、大きな発見をさせていただきました。新人時代の駆け出しの頃はもちろん、情報番組のリポーターであれ、歌番組であれ、司会を続けているうちに、放送で伝える根っこの部分は同じだと気が付いていったんですね。番組に登場する人たちの情報や背景、どんな思いで歌っているのか。“自分で取材し自分の言葉で伝え司会をしていく”、それは同じであると。


――現在の『おはよう日本』においても、やはり本質的なものは根っこでつながっていると。


阿部「ベースは変わりません。ただ、『おはよう日本』は今まで担当してきた番組とは環境が違うため、気持ちの問題で異なる部分があります。今まで僕が担当してきた番組は、アナウンサーの出演が多いときで3人程度でした。しかし、『おはよう日本』は、キャスター、リポーター、気象予報士など20人を超える大所帯。早朝にこれだけの人数が一つの現場で同じ仕事をしているニュース番組は、NHKでは他にありません。仲間意識というか、学校のような雰囲気というか。」

――原稿を読んでいても、スタジオ全体の動きを俯瞰できるものなのでしょうか?


阿部「俯瞰しているということはないですね。原稿に書いてあることを、意味通りにしっかり伝える。目の前のことに集中するだけで手一杯。今放送として流れている自分の言葉は視聴者の方に分かりやすく発信できているか、それを大切にしています。歌番組にしても同じです。NHKホールで3000人のお客さんが見ているわけですが、チラッとでも意識をしてしまうと舞い上がってしまう。自分がそのステージに立って、何をするべきか、次の曲紹介のどういう部分をお客さんに聞いてほしいのか、どんな情報をどう伝えるべきか、自分の役割に集中することを大切にしています。


――スタジオを共にしているアナウンサーの皆さんが、「阿部さんは集中しながらも全体を見渡しているような雰囲気があり、自分の気が付いていないところにも気が付く凄味がある」とおっしゃっていました。