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今の自分にしかできない役割を

――不思議な映像や驚きの映像、そこに携わる人々の人間ドラマなどをお届けする『ワンダー×ワンダー』で司会を担当されている神田アナウンサーですが、番組における役割や心がけていることは何でしょうか?


神田「『ワンダー×ワンダー』は、回によって内容が異なります。例えば、日本ではあまり知られていない世界の大会やレースなどをお伝えする回では、その地域の特性や文化背景など専門的な情報を把握しておくナビゲーターのような役回りが求められます。逆に、ゲストに専門的な知識を持つ方をお招きする回は、話を聞き出す役になる。また、『ワンダー×ワンダー』は生放送の回もありますので、そういった時は進行に徹することになります。自分の存在意味がその時その時で違うという意味で毎回特番のような番組なので、「私はこういう役割だ」と決め付けずに、自分がすべき役割を放送ごとに熟慮して臨むということを心がけています。」


――放送の内容ごとに自分の役割を変化させつつ、舵取り役として番組の進行をしなければならない。バランスを取るのは難しくないですか?


神田「それを解決する方法の1つとして、その回のゲストの方の名前を紙に書いて、"この方は番組の中でどういった役割をされるのか"ということを自分なりに考え、自分とゲストとの役割関係を事前に相関図として作成するようにしています。"どういった話を伺うべき"か"自分の立ち位置はどこにあるのか"など、全体を俯瞰(ふかん)することで、より柔軟に自分の役割を想定したり、司会という部分にも集中することができるかな〜と。」しかし、実際に放送をチェックすると、ゲストの方と自分に温度差があるなど反省点は尽きないですね。


――『ワンダー×ワンダー』は毎回驚きの映像が登場します。神田さんはゲストの方からリアクションを引き出さなければいけないわけですが、ご自身はあまり驚けないという立場にあります。こういったことも温度差の一因に?


神田「その通りです(笑)。「この映像はすごいですよね!」などと一緒になって言い過ぎると、押し付けがましくなってしまう。かといって、冷静に進行すると浮いてしまう・・・。毎回違うという自分の役割の中で、"どういったさじ加減をするか"という繊細な部分が、自分の中では現在進行形のテーマですね。

――テレビで拝見している神田さんからは想像できないような新人時代ですね。そういった状況の中で、手ごたえをつかんだきっかけのようなものはあったのでしょうか?


神田「入局して1年くらいは、体調を崩してしまい、顔はニキビだらけになり、視聴者の方からの苦情もあったと聞きました。なんとかその状況を打破したいとひたすら練習し、先輩の助言はすべてメモにとって吸収することに努めました。そういった中で、自分の成長を少し感じることができたのは、5分間の生中継を担当させてもらった時ですね。入局して1年が終わろうとしていた頃です。自分が取材したものを、自分で構成やコメントも書いて伝えきったときに、「これがアナウンサーの仕事なんだ」と実感が沸いてきました。そして、放送を見ていただいた方から声をかけられたときに、はじめて画面の向こうに視聴者がいることを認識できたような気がしました。福岡は温かい方が多いので、「あんた上手くなったとよ。昔は見られたもんじゃなかったけんね」なんて声をかけていただいたことも、自信につながるきっかけになったと思います。つらいことも多かったですが、そのぶん励まされたことや成長できたことも多かった時代です。」

――アナウンサー神田愛花として、ご自身が考える役割というものはどういったものでしょう?


神田「私よりもアナウンスメントが上手なアナウンサーが、NHKにはたくさんいらっしゃいます。でも、なぜか自分はNHKにいるんです・・・。それは本当に感謝すべきことで、その中で自分に何ができるのかをしばしば考えています。自分に課せられた生涯通じての役割というのは、おそらくNHKにおいて既存にはなかったプレゼンであるとか、弾け方ではないかと思っています。NHKアナウンサーの基礎を保ちつつ、その中でそのギリギリの境界線を広げていくことが自分の役割だと感じているんです。アナウンス力もまだまだ未熟な自分が、そんな大それたことをいうのは、偉そうで恐縮なのですが…(苦笑)。」


――その意識はとても覚悟がいることだと思うのですが、いつごろからそう思えるようになったのですか?


神田「現在入局して9年目ですが、本当にここ1年くらいです。もともと報道志望でNHKに入局したということもあり、「神田さんのようなキャラクターのアナウンサーはいないからいいと思うよ」と周りの方から褒めていただいても、本当にその個性を伸ばしていいのかどうか、素直に受け入れることができませんでした。私のようなアナウンサーは、見ている方の好き嫌いがはっきりするキャラクターだと思いますから、NHKの視聴者の皆さんが受け入れてくれないのではないかと心配で。しかし、一緒に仕事をしたスタッフやタレントさんから、「そういう反応こそ今までなかった新しいこと。限られたアナウンサーにしかできない役割だからまた一緒に仕事をしたい」とたくさん声をかけていただき、徐々に自分の個性を信じる事ができるようになりました。今しかできない自分の役割をより向上させて、より多くの視聴者の方に、「この番組は面白いな」とか「また見ようと」と思っていただけるような糸口を見つけていきたいですね。」