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【坂本龍一 いま、僕が思うこと】「自然に寄り添う」次のステージへ

 いま、ぼくたちの生活を見つめ直すと、家でもオフィスでもほとんど人工物に囲まれているので、自然が発している信号に鈍感になっています。敏感なら津波から逃げられるという単純なことをいおうとしているのではないのですが、自然を奪ってきてしまった文明を、どこかゆがんでいると大きく反省させられる機会に3・11はなったと思います。


 それでも1970年代以降、急速に自然とは何か、生態系とはどういうものか、説かれるようになってきた面もあります。例えば、サケが海洋を回遊して海の栄養を体に詰め込んだあと、川上に戻って産卵し死んで土壌の一部になりますが、それが広範囲の森に栄養を与えるという大きな生態系ができています。


 そのようなシステムが解明されるまで、人間はずっと生態系を壊し続けてきたんですが、その行為は人間が進歩しすぎて地球を壊してきたのではなく、むしろ無知だったということなのです。

 もともと、自然の声を聞くということはアートの根源だと思います。現代社会で生きていると忘れがちになる自然からのメッセージに対し、敏感に反応する回路を取り戻していく。それが、震災以降これからのアートの役割にもなっていくと感じています。