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【水内茂幸の夜の政論】「自民党は圧勝しすぎ」引退の池坊氏 親しい安倍首相を心配

 池坊さんと待ち合わせたのは、東京都千代田区ホテルニューオータニ内にある和食店「KATO’S DINING&BAR」。

 池坊さんの父は元貴族院議員の梅溪通虎久邇宮朝彦親王は曽祖父にあたり、母上は香淳皇后と従姉妹同士にあたられる。池田動物園園長で天皇陛下の姉、池田厚子さんの夫・池田隆政さんとも再姉妹。昭和38年に500年以上の歴史を持つ華道・池坊家に嫁ぎ、平成8年の衆院選で政界にやってきた。

 「私の父は終戦爵位も奪われ、財産も取られた。山ほどあった満州鉄道の株は紙くずになり、いわば価値観が根底から崩れたのよ。そこで育った私は、小さなころから、すべてを『本当か』と一歩引いてみながら生きてきた。東京から嫁いだ京都でも、イケズ(意地悪)にある意味鍛えられ、たくましくなったわ。自分で考え、選び、責任はすべて自分が引き受ける。自分で言うのもなんだけど、主体性はすごくあると思う」

 「自民党が正直ここまで圧勝するとは思わなかったな。安倍さんとは親しく、彼は官房長官時代、多忙の合間を縫って私主催の会で講演してくださった。とても優しい方だけど、心配なのは今のテンションが高いことね

 「私が一番恐れるのは、経済対策ね。安倍さんはデフレ脱却を最優先課題に掲げ、日本銀行に2%の物価上昇目標(インフレターゲット)を据えるよう求めている。だけど、インフレで物価が上がっても、ただちに皆さんのお給料は上がるかしら。日銀法改正もちらつかせながら、過度に干渉する姿勢も危うさを感じる。平成24年度の補正予算案も、規模は10兆円でしょ。来年度末までに使い切れなければなりませんが、余ってしまうのではないかしら」

 「私は日本に2大政党制をちゃんと根付かせたいと思っているけど、これだけ衆院自民党の力が強くなると、安倍さんは『なんでもできる』と錯覚を起こさないかしら。右傾化しすぎることも心配。日本の政治にはある程度、リベラル的な力も必要よ」

 「野田佳彦前首相はよくやった。消費税増税は誰かが決断しなければならないから、野田さんは火中のクリを拾われたのだと思う。後世には必ず評価されるわ。民主党の一部議員で問題だったのは、松下政経塾』的な育ち方ね。松下幸之助さんも草葉の陰で泣いていますよ。政治家は国民生活に大きな影響を与える法律を作るのだから、人の痛みや苦しみが理解できなければならない。でも、優秀な人にお小遣いをあげて純粋培養しても、なかなか人の心の機微はわからない。組織に所属し、不条理な上司に口惜しい思いをしたり、嫌な同僚に気を使いながら人間力を養うのよね。政治は原理・原則ではダメ。情愛や包容力のない政治家は不適格よ。野田さんは政経塾出身だけど、人の心に寄り添う繊細なところは持っていたわね

 政経塾といえば、前原誠司元外相はどうですか。京都出身ということもあり、池坊さんはかなり親しい関係と思いますが。


 「彼は本当にかわいがっている。頭の回転の速さはピカ一だし、正義感も強い。ただ、まだ彼はまだ若いのだから、焦ることはないのよ。以前、『オバマ氏は47歳で米大統領になった。僕も頑張らなきゃ』といわれたことがある。『まだあなたは若いじゃない』と返しても『そうはいかないんです』と。苦労して育ててくれたお母様に、早く晴れの姿を見せたいと思っているのかしら。私も子を持つ親として、気持ちはわからないでもない」

 「橋下徹代表代行が注目を集めたけど、彼の石原慎太郎代表に対する気持ちって、自分の父親に対する憧(どう)憬(けい)の部分が見え隠れする。あの人は強くてリードする『親父』像にあこがれているんじゃないかしら。でも、2大政党制の片方が民主か維新かわからなくなるとは思わなかった」

 「1党支配は政治を傲(ごう)慢(まん)にさせる。与党を脅かす緊張感を早く取り戻してほしい。そのためにも『政治は規律』と学ぶこと。かつ、人の生臭い生き方にも対応できるようにならないとね。言い方は気をつけなければならないけど、『必要悪』ってあるの。沖縄に米軍基地はない方がいいに決まっている。でも、基地がなければ日本国民全体の生活が脅かされるのよ。必要性をしっかり判断しつつ、沖縄の人々の心に寄り添えるのが政治じゃないの

華の血族

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【傳家寳(でんかほう)】(安岡正篤)