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愛されていなかったシャープ 下請け業者から恨み節続出:ジャーナリスト 山口義正

 このところ信用調査会社が相次いでシャープやパナソニックといった大手電機メーカーの取引先について調査リポートを発表している。業種別、あるいは地域別に取引業者がどのような分布になっていて、その従業員数がどれほどに膨らむか、そしてリストラが本格化するとどのような影響が広がるのかといった内容だ。

こうしたリポートには書かれていないが、実は数字にならなかった調査結果があるという。シャープの下請け調査だ。

 シャープの下請け業者は、よほど部品を安く買いたたかれたり、無理な納期を強いられたりしたようだ。その恨み骨髄で、聞き取り調査に対して「商売だから付き合ってきたが、(経営危機に陥った今)積極的に取引したいとは思わない」「正直言って、ザマミロ」といった、下請け業者の声にならない声が方々で噴出した。調査会社によると「こうした声は驚くほど多かった」。

早い話が、愛されていないのである。

 「自動車に欠かせないカスタムICを供給しているルネサスと、テレビなど他社でも作れる最終製品を手掛けているシャープとは違う」という理屈はわかる。しかしこうした芳しくない評判が下請け業者に限らず、金融機関の間からも漏れてくるのはどうしたことか。


 かつて、シャープを含めて大手電機メーカーから、証券会社の事業法人担当者は無理難題を吹っ掛けられ、泣かされることも少なくなかった。率先して「増資の段取りを致しましょう」という金融機関が出てこないのは、事業の展望が開けないことが大きな要因なのだろうが、本格的な再建が遅々として進まないのは困ったときの味方を作らずに目先の利益を最優先したツケが回ってきているからではないか。

 部品を安く調達したり、資金繰りや在庫を徹底的に管理したりするのは、経済合理性を突き詰めるうえで重要だ。しかし利益や成長を追い求めた結果、いざというときに誰も助け舟を出してくれないどころか、敵に回りかねない経済合理性とは何だろうか。クビを切った社員が中国企業や韓国企業にさらわれて技術がダダ漏れになり、自らの首を絞めてしまうのと通じている。シャープに限った話ではない。