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アングル:「アベノミクス」が強いる高齢者の痛み

アベノミクスはまさに今の日本経済が必要としていることかもしれないが、それは日本を輸出主導型の経済大国へと押し上げ、貯金や年金での生活に向けて準備していた高齢者の負担の上で成り立つとも言えるからだ。

バブル経済が崩壊してからの20年間、日本経済は停滞が続いていたが、緩やかなデフレによって高齢者の購買力も緩やかに右肩上がりが続いてきた。インフレを起こしてそれを逆回転させようとしているアベノミクスは、成長に向けた財源を捻出するため、比喩的にも実質的にも高齢者に重い負担をかけようとしている。

ただ、インフレ上昇や増税の見通しで高齢者が持つ700兆円を超える資産の流動化が始まれば、アベノミクスが効果を発揮する前に財政危機に火が点くことになりかねないと一部のアナリストやエコノミストは警戒する。


ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの櫨浩一氏は「将来的にお年寄りは貯金を崩していく。その観点から追加的な国債の発行が難しくなる」と指摘する。

ニッセイ基礎研究所の櫨氏は「財政出動と金融緩和は今まで何回かやってきたが、その効果はいつも一時的だった」とし、「今回の刺激策が恐らく最後になるだろう。公的債務は大き過ぎであり、社会は高齢化が進んでいるからだ」と語る。

安倍政権のギャンブルは、インフレ期待が高齢者やその家族の消費拡大を誘発し、国内需要が増大して雇用と所得が伸びるという好循環をもたらし、結果的に税収が伸びて借金を減らすというものだ。


エコノミストらは、アベノミクスによって消費や税収がどれほど伸びるか予測するのは極めて難しいと指摘する。その一方で、インフレは高齢者の購買力を落とし、引退に備えた貯金の切り崩しは増えることになるだろう。

アベノミクス支持派は、消費拡大こそが日本には必要だと主張する。一方、アベノミクスに懐疑的な論客は、政府は高齢者の虎の子の資産をインフレから守ろうとしないなら、彼らの消費拡大をあてにすべきではないと反論する。


投資助言会社フジマキ・ジャパン藤巻健史氏(62)は「古い人間」はハイパーインフレが起きて、築き上げた資産が消えることを考えると語る。藤巻氏は顧客に対し、インフレに備えて資産を外債や外国通貨に移すよう助言している。


30年債利回りは足元で2010年半ばの水準にまで低下している。その理由の1つには、「高齢者貯蓄」が国債を売り始めたとしても、日銀の買い入れがそれを吸収すると投資家が考えていることがあるかもしれない。ただ一部には、投資家がアベノミクスの失敗を見込んでいることもその背景にあると指摘する声もある。