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【歌舞伎座 新時代へ】(伍)提言 人間ドラマ刻む「100年劇場」へ

 「21世紀の歌舞伎は、伝統の正しい継承と、伝統を踏まえた創造を目指したといえます」


 河竹黙阿弥のひ孫でもある演劇学者、河竹登志夫早稲田大名誉教授(88)は、それを“二元の道”と呼ぶ。KABUKIが国際的な広がりを見せる中、新たな歌舞伎座の核になるのもやはり伝統と創造だ。

 演劇評論家の渡辺保さん(77)は「前の歌舞伎座も、初代中村吉右衛門(きちえもん)や六代目中村歌右衛門(うたえもん)がまず芸の規範を作った」とたたえ、その役割を当代吉右衛門さんらに期待する。吉右衛門さん(68)も「新しい歌舞伎座で、次代を担う若手を指導するのが務め」と話す。


 ただ世間と同様、歌舞伎界の若者も変化している。若手を引き立て、指導を続ける坂東玉三郎さん(62)が漏らすのも継承の難しさだ。「ビデオもあって技術を伝えるのは容易になりましたが、その道をひたすら歩き、その中で作法や真心、礼儀を学ぶという、修業がしにくい時代だと思います」


 4月から6月までの3カ月間で、吉右衛門さんは8役を演じる。「命がけ」と意気込む人間国宝の背中から学ぶ若手だけが未来の歌舞伎座の芯(しん)になる。

 渡辺さんは「大正や昭和初期は俳優も熱心に新作を探し、六代目尾上菊五郎岡本綺堂に頭を下げた。それを俳優もスタッフも心がけるべき」とプロデュース力の必要性を説く。一方で、黙阿弥ら座付狂言作者が所属した「作者部屋」組織の復活も提言。「上演台本作りと、戯曲を書くのは違う仕事。両方が必要」とも指摘する。

 社会的に注目されるこけら落とし興行だが、渡辺さんが心配するのは“その後”だ。


 「興行である以上、イベント性は否定できないが、ただのイベント化して内容がなくなっては困る。宙乗りと早替わりだけでいいのか。そこに人間がいなければ駄目です」


 戦後、歌舞伎の海外公演に監修者などで12回参加した河竹さんも、歌舞伎が世界で評価された理由を「ドラマ性。人間の普遍的愛憎あればこそ」と話す。

http://d.hatena.ne.jp/d1021/20130215#1360940197
http://d.hatena.ne.jp/d1021/20090601#1243856097