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【話の肖像画】歌舞伎俳優・坂田藤十郎(81)[5]

 今月は新しい歌舞伎座で「鶴寿千歳(かくじゅせんざい)」に出演しています。そして5月には「伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の政岡(まさおか)を勤めます。新しい舞台で、今度はまた、どんな政岡を生きることができるのだろう、そう思うとワクワクしてまいります。


 〈『伽羅先代萩』は伊達藩のお家騒動をもとにした義太夫狂言の大作。お家乗っ取りをたくらむ敵方の陰謀から、わが子を犠牲にしてまで若君を守ろうとする乳人・政岡の物語〉


 大変なお役です。立女形が演じるお役のなかでも最高峰の一つ。赤の衣装で片はずしの鬘(かつら)のお役は女形としては最高ですからね。歌舞伎界の節目のときに、こういうお役をさせていただける。名誉なことですし、頑張らなくちゃいけないな、と思っています。


 政岡は昭和47年に初演しましたが、平成10年、東京の国立劇場の通し上演の際、私自身の解釈を加えた新しい演出でやってみたのです。上手側に、政岡と若君とわが子千松が一緒に生活する小さな部屋を作りました。政岡にとって周りは誰も信用できない。ですから千松が殺された後も、若君を誰にも預けません。


 私の政岡は上方の女形人形浄瑠璃のやり方をまじえた、強い男勝りの女性です。政岡は現代でいうキャリアウーマンかもしれない。周りは敵ばかりという状況で日々闘っている。いまの働く女性と同じなのですよ。


 昔から、丸本歌舞伎(人形浄瑠璃の戯曲を移入した芝居)のあり方をよく考えていました。一見、複雑な人間関係やストーリーをどうしたら、いまのお客さまによく理解していただけるか。そのためには、ストーリーをきちんと通し、役の性根を大切にしながら、人間を描く。そして、“いま”という時代を見極める。


 歌舞伎をどうしようとか、大それたことを思っているわけではないのです。先輩方から教わったことを自分の中で大切に温めておく。すると機が熟したときに、いい形で自分の肉体と一体化して発散される。だからこそ歌舞伎は400年間、普遍の命を保ってきたのではないでしょうか。


 〈ご贔屓(ひいき)から贈られた白い胡蝶蘭(こちょうらん)が華やかな楽屋。化粧鏡の前に座った藤十郎さんは艶やかな肌に色気がにじみ、オーラが漂う〉


 みなさん、若い、若いって言ってくださるけど、特別何もしていないのですよ。しいて言えば歩くことかな。お正月は大阪松竹座に出演することが多いので、初詣は心斎橋あたりから、「曽根崎心中」ゆかりの露天神社(つゆてんじんしゃ)まで1時間ぐらいかけて家族で歩いてお参りに行きます。


 老若男女、どなたと接するときでも垣根がないですね。若い人とも一緒に歌舞伎を作っていける。歌舞伎はここ最近、随分幅が広がったと思います。歌舞伎座開場を機に、日本はもちろん、海外の方にももっと広く見ていただきたい。そのために、私もまだまだ頑張っていきたいと思っています。

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