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インタビュー:ベトナム一貫製鉄所建設、検討継続=JFEスチール社長

JFEホールディングス(5411.T: 株価, ニュース, レポート)の鉄鋼事業子会社、JFEスチールの林田英治社長は、事業化調査(FS)を進めているベトナムでの一貫製鉄所建設について「長い目でみれば、やめることは決められない」と述べ、前向きな検討を継続する方針を示した。


ただ、当面はアジアの鋼材需給ギャップが解消されない見込みで「急いで決断する必要はない」とも話し、建設・操業コストの低減に向け、期限を設けず検討を続ける考えを示した。ロイターとのインタビューで25日に語った。

同社は昨年3月、台湾の鉄鋼メーカー義聯集団(Eユナイテッドグループ)がベトナムで計画している高炉一貫製鉄所プロジェクトに参画する方向でFSを行うと発表。粗鋼能力約350万トンの薄板を中心とする製鉄所を2016年に稼働させる想定で検証する意向を示した。判断を先送りしていることについて林田社長は「製鉄所の建設コスト、操業するランニングコストで他国や他社と優位に戦える確信を持てないとゴーサインは出せない」と指摘。設備の建設費低減など「もう少し時間をかけて検討することが残っている」と語った。


同社を含め鉄鋼業界を取り巻く環境は厳しい。中国鉄鋼メーカーの増産意欲が根強く、中国の粗鋼生産は年率8億トン近い水準で推移しており、アジアの鋼材市況は再び軟化傾向にある。林田社長は「中国の需要が伸びないなか、輸出ドライブが復活している」とし、今期は市況の大幅な改善は見込めないと語った。中国の鋼材需要は2.5%程度の伸びにとどまる可能性もあるとし、アジアの需給ギャップは継続するとの前提で事業計画を策定していると話した。


昨年末以降の円安で、JFEなど日本の鉄鋼メーカーは輸出の採算が改善しているが、韓国勢などの生産増強も予定されているため「(JFEとしての)輸出量はそれほど増えない」見通しとした。


一方、国内需要に関しては、円安で「自動車各社が今期の国内生産計画を前期比減から前期比並みに上方修正したことはプラス」と指摘した。円安効果で産業・建設機械の需要増も期待しているが、豪州やインドネシアなどでの鉱山開発が停滞しており「戻りは鈍い」という。造船向けの落ち込みも顕著で、土木・建築向けが好調でも今期の国内需要は前期比横ばいにとどまるとの見方を示した。


<ROS10%の目標は維持>


JFEは昨年4月に3カ年の中期経営計画を発表し、最終年度に当たる15年3月期に連結売上高4兆円、売上高経常利益率(ROS)10%を目指すとの目標を掲げた。しかし、13年3月期は原料安に伴う在庫評価損などが収益を圧迫し、売上高は前期比0.7%増の3.18兆円、経常利益は同1.4%減の522億円となり、ROSは1.6%にとどまった。グループ主力のJFEスチールもROSは0.6%に低下した。


林田社長は1年前に比べ環境が悪化しており「3年で考えていたことを4─5年で考えないといけないものもある」と語った。グループ全体では3年間累計で1兆円を投資し、うち9割を鉄鋼事業に充てる計画だったが「利益が出ていない分、投資は抑制せざるを得ない」と指摘した。ただ、JFEスチールとして「15年3月期にROS10%目標の旗は降ろさない」とし、コスト削減により今期はこの半分程度まで改善させたい考えを示した。グループの今期コスト削減は1000億円の予定。


昨年4月には、鋼材販売を約3000万トンから5年後に4000万トンまで拡大する目標も公表した。林田社長は「この目標達成は1─2年遅れる」としたが、10年後に5000万トンまで拡大するとの目標は変えないと語った。現在は国内生産が中心で、販売は国内と輸出が半々だが、鋼材販売量が5000万トンに達する際には「3分の1が国内生産・国内販売、3分の1が国内生産・海外販売、残りが海外生産・海外販売」を想定しているという。国内生産は現行とほぼ変わらないが「コスト競争力は維持できる。ドル/円が80円でも可能と判断していたが、90─100円になればより確実なものになる」と語った。


中計では、鉄鋼原料の鉄鉱石と原料炭の権益取得を増やし、自社原料比率を20%弱から30%まで引き上げる目標を盛り込んだが、林田社長は「優先度は低下した」と語った。原料価格がピーク時に比べ大幅に下落した一方、資源の権益価格は高止まりしていることが要因。ただ、豪州に偏重している原料炭の調達先をアフリカ東部などに分散することには関心があると語った。ライバルの新日鉄住金(5401.T: 株価, ニュース, レポート)は今月、権益3割を保有するモザンビークのレブボー炭鉱開発プロジェクトについて、同国政府から採掘権を取得したと発表した。原料炭の安定調達が狙いで、JFEも「調達先分散の研究は続ける」という。