インタビュー:日銀緩和で80年代型バブルはない=不動産経済研・福田取締役
──アベノミクスの効果を業界としてどうみるか。
「建築コストの上昇や金利先高懸念が出て、エンドユーザーの背中を押す効果があった。そこが不動産・マンション業界へのアベノミクスの効果だ」
「マンションの供給ペースで言うと、民主党政権の時から変わっていた。リーマンショックなどを背景に4年ほど前に着工が激減したが、2011年には4割増加した。2012年は横ばいだったが、まだ全部は供給されていないため、供給余力はすでにある」
──供給余力もあり、エンドユーザーも動けば当面は好調ということか。
「少なくとも着工の状況から落ちていくイメージはない。年間5万─6万戸の供給があと数年は続くと思う」(注:2012年の首都圏マンション供給は前年比2.5%増の4万5602戸)
──消費増税前の駆け込みも出てくる。
「業者は消費税が上がるからといって急に(用地などを)仕込むことはしない。また、最近ではゼネコンがついてこれなくなっている。駆け込みで供給を増やそうとしても人手確保の問題があり対応できない。賃金を上げればできるかもしれないが、最近は首都圏では若干とはいえ、ゼネコンの力がデベロッパーより強くなっている」
「それでも大手以外の業者は消費税前に仕込むという動きがあった。ゼネコンの取り合いも発生した。まったく(消費増税の影響が)ないとは思っていない。ただ雪崩のようにそこに向かうことはないだろう」
──日銀の大胆な金融緩和で資金が大量に供給される。80年代のようなバブルは起きると思うか。
「ないだろう。あの時は今買わないと来月になれば価格が上がる、(販売が)2期になったらまだ上がり、3期になったらまた上がるという状況。デベロッパーは売り出しを遅くすればするほどもうかると言っていた。今それはまったくと言っていいほどない。今買わないと一生手に入らないという不安感もエンドユーザーにはない」
「今は転売なんかできない。転売したら損するだけだ。バブルということはない。ようやく復調したという感じではないか」
──大量に供給された資金が不動産市場に入ってくるのでは。
「銀行が貸出先を探すなかで、不動産は効果的だ。それがバブルの発生を生むのではないかということだが、財務省などは抑え気味の方向にいくだろう。あの時は1億人が踊った。そういう状況に今はない」
「(不動産の動きが出ている範囲は)田中首相の時は全国、中曽根民活の時は大都市圏、小泉政権の時は首都圏、それが今は都内だけになっている」
「むしろ金融機関にはもっと資金を出してほしい。中堅業者などからは銀行が貸してくれないという声も聞く。中堅、中小に資金がなく、大手の寡占がさらに続く可能性がある。それはエンドユーザーの選択肢を狭める」
──金融機関はまだ資金を出していないと。
「総量規制だ。銀行は否定するが、デベロッパーはそう言っている。(大手銀行の統合などを受け)貸し手の数が減っていることも影響していると思う。リーマンの後は住宅ローンの締め付けもあった。買い手にも売り手にも資金が行かない状況だった」
──この先の業界のリスクは。
「供給業者にとって現在、リスク的なものは非常に少ない。しかし間違いなく(リスクは)金利。住宅ローン金利だ。数百万円(単位で)違ってくる。金利が上がってしまうと、購入を迷っていた人が『躊躇』から『あきらめ』に変わる。それは金利(の影響)が一番だ」