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焦点:中国空母が南シナ海で発する「表と裏」のメッセージ | Reuters

中国初の空母「遼寧」に随行する戦艦が今月初めに米国のミサイル巡洋艦と異常接近し、米国側に衝突回避行動を取らせたのは、軍事的かつ政治的に重要な訓練を守る目的があったと言える。


アジア地域の軍当局者や専門家らによると、山東省青島市の基地から出港した遼寧の今回の訓練は、南シナ海で初めての実施というだけでなく、米空母と同様に駆逐艦などを初めて随行して行われた。


豪キャンベラ在住の軍事アナリストで元防衛当局高官、ロス・バベッジ氏は「中国は南シナ海に空母を送り込むことで大国としての地位を地域に誇示し、それに対し米国は『我々は最大の勢力として、まだここにいる』というシグナルを送り返している」と語った。

米太平洋艦隊によると、ミサイル巡洋艦「カウペンス」は今月5日、南シナ海の公海上で活動中に、中国海軍の艦船と異常接近した。これについて、ヘーゲル米国防長官は19日、中国側の行動は行動は「無責任」だと強く非難した。


一方、中国の新華社は、カウペンスは中国海軍の艦船から停船するよう「警告」を受けていたと報道。米国側は遼寧を「意図的に」に監視下に置いていたとしている。

中国海軍は今回の訓練を「科学研究・実験と軍事演習」と称しており、来年1月3日に終了する予定だが、それ以上の詳細はほとんど明らかにしていない。中国国防省には同訓練に関するコメントを求めたが、まだ回答は得られていない。


遼寧は1998年にウクライナから購入して改修した空母で、中国の海軍力増強を象徴する存在。過去20年にわたって国防予算を毎年ほぼ2桁増やしてきた中国は、領有権問題を抱える南シナ海東シナ海での経済権益を守るべく、遠洋航行能力を完全に備えた海軍力の獲得を目指している。


空母打撃群はその中核となるもので、遼寧の訓練を成功させることは、2020年までに複数の国産空母を展開させるという目標に向けた第一歩となる。


国防総省は今年発表した中国の軍事力に関する年次報告書で、中国で国産空母が就役するのは早くても2025年だと指摘している。


軍事専門家は、国産空母の予備的な建造は一部始まっているとみているが、中国の空母建造計画は国家機密であり、長興島にある江南造船所で建造が進んでいるという確固たる証拠はまだ報告されていない。

国内外の関心は、遼寧乗組員らが空母航行の中核要素をどれだけ習得しているかに集まっている。空母の運用には、極めて難しい艦載機の離発着だけでなく、多岐にわたる高度な海軍戦略や理論も求められる。


南シナ海で先月訓練を実施した米空母ジョージ・ワシントンに乗船する匿名の米軍高官は、ロイターの取材に「空母は非常にタフで複雑、かつ費用がかかる仕事だ」と説明。「きちんと運用できるようになるまでには何年も何年も要するが、中国はそれをゼロから始めている」と語った。


中国メディアの報道などによると、青島市の基地から出港した遼寧の最初の訓練は、艦載戦闘機「J─15」の離発着に集中しているもよう。遼寧には過去にも補給艦などが随行することはあったが、11月26日に出港した今回は初めて、駆逐艦2隻とフリゲート艦2隻などが随行している。


アジア各国の大使館付き武官らは、遼寧海南島三亜の基地を母港にするとすれば、南シナ海を定期的に航行するようになると警戒している。

一方で、中国のアナリストと一部の国営メディアは、こうした警戒感を解こうと躍起になっているようにも見える。


遼寧が中国海軍の空母として昨年初めての海上試験を実施した際も、中国人民解放軍の当局者たちは、領有権問題の解決に向けて同空母がすぐにでも派遣されるとの一部国民の期待をいさめていた。


復旦大学国際問題研究院の沈丁立副院長は、遼寧は実戦用というよりは訓練目的の空母だとし、「米国は安心していい。向こう50年は寝ていて大丈夫だ。中国は米軍の能力には対抗できない」と語っている。


また共産党が発行する中国青年報は、遼寧が抱える一連の装備面の弱点を指摘。さらに、米海軍のような大規模な空母戦闘群を「有機的に運用する」ことが重要だが、「中国の空母はそのレベルには達していない」と論じた。


遼寧がいつ完全に機能するようになるかについても、多くの疑問が残されている。当初は3─4年で実運用可能になると推測されていたが、コンサルティンググループ「IHSエアロスペース・ディフェンス・アンド・マリタイム」の北京駐在シニアアナリスト、ゲリー・リー氏は、10年先に伸びる可能性も内部から漏れ伝わっていると指摘。こうしたうわさは「(空母に対する)期待をコントロールする側面もあるが、空母戦闘群のような複雑なものを準備が整う前に急いで使いたくないという思惑もあるのではないか」と語った。