【解答乱麻】教育評論家・石井昌浩 科学の未来見据え考えたい - MSN産経ニュース
STAP細胞については、その後、論文の画像に疑問があるとのネット上の投稿をきっかけにして、理化学研究所による調査が開始され、4月初旬には理研が記者会見して、論文の画像に捏造(ねつぞう)と改竄(かいざん)があるという調査結果を発表した。あっという間に晴れの舞台だったはずの研究の場が暗転し、いまだに混迷のさなかにある。
しかし問題はハッキリしていると思う。1つは、STAP細胞が本当に存在するのかどうかという点。あと1つは、STAP細胞の存在を実験によって再現できるかである。この2つが現時点で実証されないからといって、STAP細胞が存在しないと結論づけるのは早計に過ぎるだろう。
小保方さんの論文執筆の作法や、研究ノートの不備などの未熟さを重箱の隅をつつくように糾弾するのは疑問だ。論文発表は、仮説が科学的知見として認められる過程における出発点に過ぎないという科学の常識を理解すべきであろう。科学研究の仮説が実証されるまでには、それ相応の歳月と試行錯誤が必要とされる現実をわきまえず手っ取り早くおいしい結果だけを求めるのには無理がある。
科学の世界では仮説を立てて論文を発表した当初は誰も信じなかった理論を、他の研究者が時間をかけて検証し、確認されて定着するという手順を踏むのが通例だ。科学の歴史を変えたとされるコペルニクスの地動説にしても、後に続くガリレオやケプラー、ニュートンなどの検証により100年以上の歳月を経てはじめて、その仮説が立証されている。